第12話 試験合否
試験官が医務室に入ってくると、俺とテックの様子を見て満足げに微笑んだ。「いやぁ、本当にすごいね、君たち。特にシーク君。近接戦闘、特に武器を持たない状態でも戦闘を継続できるなんて、君はすごいよ」と感心した表情を見せる。
俺は試験官の言葉に少し照れながらも、「ありがとうございます。でも、まだまだ改善の余地があると思います」と真剣な表情で答えた。
試験官は続けて「いや、本当にすごい。でも君、なんで攻撃魔法を使わなかったの?」と顔を近づけてきた。
俺は「えっと、さっきも同じ話をしませんでしたか?」と試験官に聞くと、試験官は少し驚いた顔になってから「おっと、失礼。まだ自己紹介がまだだったね。僕は君たちの試験官の双子の弟で、君たちが冒険者になれるかどうかを判断する
「で、さっきの質問の続きだよ!攻撃魔法を使わなかった理由を教えてよ!」
俺は少し考えて「実は、攻撃魔法の使い方を知らないんですよ」と正直に答えた。イル・スティックは興味深そうに聞いていた。「なるほど。でも君の近接戦闘は素晴らしいよ。攻撃魔法を習得して戦闘に組み込めるようになれば、すぐにFランクやEランクに登れるよ」
そう言い切ると、イル・スティックはテックの方に向きを変えた。
イル・スティックはテックに向かって、「君の魔法の使い方も素晴らしかったよ。特にあの槍を使った攻撃は見事だった」と褒めた。テックは少し照れながらも、「ありがとうございます。でも、まだまだ改善の余地があると思います」と答えた。イル・スティックは満足げに頷き、「そうだね。君たち二人とも素晴らしい素質を持っている。これからの成長が楽しみだ。君たち二人とも合格だよ」と言った。
イル・スティックの言葉に、俺とテックは驚きと喜びを隠せなかった。合格の知らせに俺たちは互いに目を合わせ、笑顔で頷き合う。これから冒険者としてどんな依頼をこなしていくのか、ワクワクしていた。
イル・スティックはそんな俺の感情が表情に出ていたのか、呆れたような顔で「まぁ、まずは君たちの完治が先だけどね。依頼はどれもこれも命懸けだからね。仲間の誰かがケガしてる、万全じゃない状態で依頼を受けるなんて最悪な状態だからね」と忠告した。
俺とテックは互いに顔を見合わせ、イル・スティックの言葉を真剣に受け止めた。「はい、わかりました。しっかり休養を取って、完全に回復してから依頼に臨みます」と俺が答えると、テックも同意を示すようにうなずいた。イル・スティックは満足げな表情を浮かべ、「そうだ、そういう心構えが大切だ。では、ゆっくり休んで、元気になったら冒険者ギルドに来てくれ」と言って、医務室を後にした。
イル・スティックが部屋から出た後、テックが話しかけてきた。「僕も合格できるとは、本当に思ってなかったよ。かなりお前にいいようにやられてたし」
「そんなことないよ。俺が少しだけ近接戦闘が秀でてただけさ。普通の剣士なら魔法で剣をはじかれた時点で負けて、降参するしかなかったと思うよ」と俺は返した。
テックは少し笑って、「いや、そんなことないって。お前の動きは本当にすごかったよ。俺なんかまだまだだ」と謙遜した。二人は互いの強みを認め合い、そんな会話の中で、自然と仲を深めていった。
「なぁシーク」ベッドに横たわりながらテックが俺に話しかけてきた。「なんだ、なんか改まって」と返すと、「僕たちでパーティを組まないか。いや、パーティと言っても、もちろん二人だけじゃない。仲間を呼んだりとか」と提案してきた。
俺は少し考えてから、「悪いけど、今はパーティを組むのは遠慮させてもらうよ」と答えた。テックは少し驚いた表情を見せる。
「どうしてだ?」とテックが尋ねた。
「実は、色々なところを探索していきたいんだ。一人で動くことで、より多くの経験を積めると思うんだ。それに、自分のペースで成長していきたいっていうのもあるし」と俺は説明した。
テックは少し残念そうな顔をしたが、すぐに理解を示してくれた。「そうか、わかったよ。でも、一人で探索するのは大変だぞ。こっちにいる間、さっき言ってたじゃないか、攻撃魔法を学びたいって。基礎的な使い方は教えるから、その間だけ一緒に組まないか?」
俺はテックの提案を少し考えてから答えた。「そうだな、攻撃魔法の基礎を教えてもらうって約束もしたし、俺が近接戦闘を教える約束もした。じゃあ、その間だけ一緒に組もう。でも、その後は自分の道を進むつもりだ」テックは満足げな笑顔を見せ、俺に手を差し伸べた。
「よろしくな、シーク」俺は、その手をがっしりと掴み「もちろんだ、テック」と返事をした。
テックは頭をかきながら「その前に、俺の体が治ってからだな」と答えた。
俺は、「分かった。治るまでの間は適当に簡単な依頼でも受けて小銭稼ぎをしてくるよ。正直言って、あと3日分ぐらいのお金しか持ってないんだ」
テックは、「おいおい、大丈夫かよ。あれだったら工事現場とかの仕事を受けると割がいいぞ」と教えてくれた。俺は軽く「ありがと」と声をかけると医務室を後にした。
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