第11話 試験後
試験官の合図を聞き、
試合の余韻が残る中、俺は深呼吸をして体の緊張を解いていく。相手の状態が気になり、目を向けると、すでに医療班が駆けつけていた。彼らは手際よく応急処置を施し、担架で運び出そうとしている。俺も傷を負っているが、それほど深刻ではないようだ。
試験官は手をたたきながら俺に近づいてくる。「いやぁ、驚いたよ。君の近接のセンスはGランクには収まらないものだね。しかし、攻撃魔法を使わないのは舐めプなのかい?」と尋ねてくる。
「いいえ、そうではありません。俺は、攻撃魔法の使い方を知らないんです。」っと言い切った後に、あれこれ、攻撃魔法使えないと不合格みたいな感じか?と不安になる。試験官は私の表情を見て、にっこりと笑った。「君の近接戦闘能力は素晴らしい。攻撃魔法がなくてもここまでやれるなんて、本当に驚いたよ。」と言いさらに続ける。
「まぁ、攻撃魔法は冒険者になった後にでも、覚えることができる。というか、むしろ近接のセンスは磨くことはできないからね。まぁ技術で補うことはできるけどね。」
試験官は俺の肩を軽く叩いた。「君は素晴らしい素質を持っているよ。これからどんな冒険者に成長するか、楽しみだ。」その言葉に、俺は胸が熱くなるのを感じた。「ありがとうございます。」と答える。
「まぁとは言っても、冒険者に合格したかどうかはわからないけどね」と言って試験官は、ウインクする。
上げて落とすのはやめてほしい。
「っと、君も医務室に向かいなさい。胴体、剣でけがしてるでしょ。」
っといいながら試験官は俺の脇腹を右脇腹を指差す。
俺は指差された箇所は、確かに、右脇腹の服が切れており、そこから血が滲んでいるのが見える。「わかりました。医務室に向かいます。」と答え、試験官に軽く頭を下げてから医務室に歩き出す。
医務室に向かうと先ほどの対戦相手が運び出されてすぐだったようで、担架の上から医療ベットの上に移動させれている場面だった。
対戦相手は試験の時に俺が投げつけた槍によって左肩に直径8cm程度の穴が空いている。
素直にグロって声が出た。その声で医務室の治療員が俺のことを気づく。
「あの、すみません。」と声をかける。治療員は手を止め、こちらを向く。「ああ、君も怪我人か。ちょっと待っていてくれ。」と言い、急いで対戦相手の治療を終わらせようとする。俺は静かに待つことにした。
治療員の手が淡く光り始め、それを対戦相手の左肩にかざす。穴が空いているからか体の中から骨、筋肉、皮膚が順番に充填されていき体の右側にできた大きな火傷は焼けた皮膚が元に戻っていくのが見える。
治療の過程を見ていると、魔法の力に改めて驚かされる。数分もしないうちに、対戦相手の傷はほぼ完治したように見える。治療員は満足げに頷き、こちらに向き直った。「さて、君の番だ。その傷を見せてくれ。」といい、俺が服を捲り上げて右脇腹を見せると、治療員は光輝く手を俺の脇腹にかざす
ほのかに温かい光が俺の傷を包み込み、切れた体の一部を充填したり、くっつけたりして治していく。
治療が終わると、傷跡はほとんど残っていなかった。「これで大丈夫だ。しばらくは無理をしないように。」と治療員は言い、俺に微笑みかける。俺は感謝の言葉を述べる。体の動きは以前と変わらず、痛みもない。治療員は治療を終えると「では、私は帰ります。二人とも安静にしていてくださいね」と最後に言い残し、医務室を出て行った。
しばらく医務室の中で休憩していると、対戦相手は意識を取り戻し目を開け、俺に話しかけてくる。
「おい、お前……すごい強いな。」彼の弱々しく声を出す。
「ああ、ありがとう」と俺は返す。「お前も相当強かったぞ。あの槍からの魔法の流れは見事だった」
相手は少し照れたように笑う。「いや、お前の方がすごいよ。あの近接戦闘のスキルは半端じゃない」
俺たちは互いの健闘を称え合い、試験の緊張感が和らいでいくのを感じた。
「名前なんて言うんだ」と相手はベットから体を起こして座りながら聞いてくる。「シーク・グロウ、シークって呼んでくれ」と返すと「いい名前だな、俺の名前はソリッド・テックエンド。知り合いはテックって呼んでくれてる」と答える。テックは少し体を起こし、まっすぐに俺を見つめる。「シーク、また今度でいいから近接の戦い方を少しだけ教えてくれ」と頼まれる。
俺は笑顔で「いいよ、その代わり攻撃魔法の使い方を教えてくれ、俺、実は知らないんだ」と頬を掻きながら返した。
テックは笑顔で応じる。「いいね、それじゃあ互いに教え合おう。冒険者になったら、一緒に任務をこなすこともあるかもしれないしな」俺もうなずき、「ああ、そうだな。お互い高め合えたら最高だ」と返した。二人とも笑顔で握手を交わし、これからの冒険者生活への期待が膨らんでいくのを感じた。
っと男二人で熱い友情を交わしている時に、医務室に一人の男が入ってくる。先ほどの試験の試験官だ。
「いや、ほんと改めていい戦いでした。二人とも」彼はそういうと手を叩きながら俺たちに賞賛の言葉を贈る。
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