第3話 恋する街角【コラボCafe】

いらっしゃいませ


『アリスcafe』へようこそ



当店 持ち寄りによる運営の為メニューは『アリス店長のお勧め(強制)』となっております。

お飲み物については自由に選べますので組み合わせをお楽しみください。



本日のお茶菓子は華やかな金平糖をご用意しております。


嬉野の釜炒り煎茶を合わせてはいかがでしょうか



――――


日曜日の昼下がり


不定休のアリスcafe 日曜日ですが本日営業いたしております。

営業日につきましては朝の定期連絡メールを参照ください。

お休みでもセルフサービスでしたらご利用可能です。


アリス店長の存在意義とは・・・




そんなアリス店長 なにやら興奮気味でございます。




――――



「見てください。手に入れましたよ」


アリスさんが高々と掲げる手には二枚のコースター

イラスト入りでございますね。でもそんなに振り回したら見えませんよ。



「推しのオリジナルコースターが二種類とも手に入りました。オリジナルイラストですよ」


それはおめでとうございます。以前から推しへの愛を熱く語っていましたからね。

どちらで入手されたのですか



「コラボcafeに行ってきました」



>>>『コラボcafe』


ご存じの方も多いかとは思いますがあえてご説明させていただきます。


ドラマやアニメ、小説など独自の世界を形成している作品とコラボレーションをして、作品世界の雰囲気を再現しているcafeです。

人気スイーツ店が作品内の人物のイメージに合わせたドリンクなどのメニューを提供していただける場合が多いですね。注文をするとおまけとしてキャラクターをデザインしたコースターやランチョンマットがもらえるサービスを付帯することが一般的でございます。


コラボcafeの中にはお店全体の雰囲気も作品に合わせるところもございまして、店員さんが服装まで再現しているところもございますね。


コラボcafe以外にもコラボBarなどもあるようでして

『赤い彗星』な方になりきってコラボBarのカウンター席で「ぼうやだからさ」とつぶやいたものじゃ・・・

とのお話をおじさまより聞いたことがございます。


<<<



「ドリンクを注文するとランダムでオリジナルイラストのコースターがもらえるんですよぉ」


ランダムとなると難しいです。しかも二種類ですか。よく揃えることができました。

いったい何回注文したのでしょうか

ドリンクだけでおなか一杯になってしまいますよ。



「コラボメニューもあって大変でした」


推しのメニューとなれば外せませんね。そうなると一度行っただけでは難しいでしょう。



「二回行っただけで揃いましたよ 私は無敵ですからっ」


無敵なのは否定しませんが二回の訪問で揃えるとは強運です。

それともフードファイターしたのでしょうか

アリスさんどちらかといえば小食でしたよね。



「同志がいますからね」


さすがにコラボcafeへひとりで参戦ではなかったようですね。



「私は呼ばれていないけど誰と行ったのかな」


姫子さんもファンでしたよね。てっきり姫子さんと一緒に行ったと思っていましたよ。

チーム内には姫子さん以外にファンはいなかったはずですね。



「中学の時に一緒だった同志がいるのです。一年前のイベントで衝撃の再会をしたのであった・・・  のですよ」


自分で『衝撃の再会』と言ってしまう人はなかなかいませんよ。

しかもどうしてナレーションなのでしょうか


まあ アリスさんですからね。



「同志である私に声をかけずに行ったとは・・・ もしかして男性ですか」


恐る恐る聞いてみる姫子さん


アリスさんの中学は男女共学でしたからね。私たち女子高育ちといたしましてはそれだけでも羨ましい限りでございます。



「男の子ですよ」



おふぅぅ 


一言でかなりの何かを持っていかれました。

もしかして殿方と一緒にコラボcafeにてデートなどをされたと宣いましたか しかも二回もっ


姫子さんも呆然としていますよ。



「二種類ともコラボくん(仮名)が引き当てたんですよ。奇跡ですよね」


アリスさん 論点が違います。



「私だってコラボくんの推しを引きましたからね。もちろん献上しました」


だから論点が違うのですよ。



仲間外れにされた姫子さん ちょっぴり拗ねております。


「私もいっしょに行けば攻略しやすかったはずですよ どうして誘ってくれなかったのですか」


ちょっと怒ってますね。



「だってコラボくん おっぱい星人なんですよ。姫子先輩がいっしょだったら色々まずいじゃないですか」



あら 姫子さんに意中の殿方を取られないように内緒にしていたのですか アリスさんにも春が来ましたね。



「おっぱいに気を取られて推しに集中できないじゃないですか コラボcafeに失礼だと思うのですよ」



そう来ましたか アリスさんの理論はなにか違うのですよね。

お胸を否定されて姫子さんのちょっと涙目に・・・ なっていませんね。むしろキラキラした目になっております。



「グッズが揃ったなら次はコラボcafe以外で誘ってみようかしら 推しに集中しなくても私に集中してもらいましょう」


からかい上手の姫子さんモードに入りましたね。冗談ですよね・・・ 本気で誘いませんよね。略奪はいけませんよ。私が揉んであげますからおとなしくしてくださいよ。



「もう決まってますからダメですよ。姫子先輩には譲れません」


アリスさん お胸に負けず対抗してきました。コラボくんに本気で恋しているのですね。初めてですよ。アリスさん立派な乙女に成長しました。(親目線)



「シュークリームのおいしい店の情報を教えてもらいました。来週いっしょに偵察に行ってきますねっ 私が確認するまでは先輩にも内緒です」



譲れないのはシュークリームだったのですか それとも・・・ あなたは無自覚にけむに巻くのですよね。

きっとコラボくんと一緒にいる時間は心地よかったのでしょう。


まだ恋だとは気が付かないのでしょうか



一方 殿方はアリスさんを確実に押しているように感じます。

旧友というアドバンテージの上に同じ作品を推す同志という絆 これは強いですね。


さらに好みをきちんと把握して次のデートへとつなげているではありませんか

アリスさんを相手にここまで寄り添うとは本気ですよね。


モテるのですよ。アリスさん

でも無自覚に微妙な距離を保ち続けるはずなのにここまで踏み込める殿方はいらっしゃいません。


どのような殿方なのでしょうか いろいろ心配ですからね アリスさんですから・・・



それに純粋に興味がございます。

目の前で花開こうとしている恋バナですよ。最高ではございませんか 優しく見守りましょう。


優しくですよ そっとね・・・



――――



店主のいなくなったアリスcafe



「お雪は来週のスケジュール空いてるかな」


偶然にも空いております。今空けました。



「おいしいシュークリームを探しにcafeめぐりデートなんていかが」


あら 私も提案しようと思っていたところですのよ おほほほ




――――




来週のアリスcafe


お茶菓子はおいしいシュークリームになりそうでございます。


またのご来店をお待ちしております。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る