第24話 脱出に向けて

 ※当作品の物語に関するお話を近況ノートに書いてありますので、一読お願いします。



 ルイナ、アルノ、シズの三姉妹はそれぞれ違った性格をしている。


 長女のルイナは責任感が強く落ち着いた性格、次女のアルノは天真爛漫で人懐っこい性格、三女のシズは無気力そうに見えて優しく甘えん坊な性格をしていたりと、同じ血が通った仲であっても結構違うところがある。


「なるほど、彼女達もこの街に来ていたのね」

「うん、だから出来るだけ早く街を出たいんだよね」


 タクマ達が泊まっている部屋には、タクマと三姉妹以外にもう一人、人間の女性がやって来ている。

 その女性はつい二日前にあったばかりのアルマーレで活動する冒険者のリアであり、彼女は外部の人間でありながらルイナ達の知る数少ない人物でもあった。


 本来、タクマは三姉妹がこの街で一緒にいる事を彼女に伝えるつもりは無かったのだが、女の気配を感じたと言うシズが再度甘えん坊期に突入し、部屋から出してくれなくなったので、仕方なく彼女に事情を伝えてタクマ達が泊まる山風亭へ来てもらっている。


「相変わらずね、血が繋がっていたとしてもそこまでべったりなのは珍しいんだけど、エルフ特有なのかしら?」


 再度、甘えん坊期が訪れたシズはいつにも増してタクマにべったりとくっついていた。それはタクマとリアが会話をしている間も関係なしに、タクマの背中から抱きつく形で頬を擦り寄せながら話を聞いている。


 引き剥がそうにも、腕力では到底敵わないのでタクマは既に諦めていた。


 それを傍目で見ていたリアは、その甘えん坊っぷりをエルフ特有な物なのか?と聞いてきたが、タクマ自身、色々と調べてみたのだがその様な記述は無かった。


 その為、この甘えん坊な部分はエルフの種族的な特性ではなく、性格の部分が大きいのだと思われる。




「で、本題なんだけど、二日間で各方面の門を調べてみたら、一番人が少ないのが西門ね、コチラは元々人の出入りが少ないっていうのもあるんだけど・・・・・・」

「・・・・・・周囲が開けているね」


 部屋に備え付けられているテーブルに、リアは自分で描いた街の地図を広げる。

 その内容は極めて簡潔で、街の大まかな形と主要施設が描かれているだけであり、細かく記載されているのは門の周辺百メートル付近までとなっている。


「そう、だから私がオススメするのは真逆の東門」

「ここは逆に衛兵が多いけど・・・・・・」


 そこでリアが提案する場所は西門と違い、一番兵士たちの数が多い東門だという。


「ようは馬車を街に出せばいいのよ、タクマは商人で私は護衛の依頼でやって来た冒険者よ、制限の対象から外れるわ」

「ルイナ達は一人だったら簡単に街から抜け出せるしね」


 リアの計画としては、タクマとリアは他の街へ物資を輸送する商人に扮して街を出ようと言うものだ。


 街を脱出すること事自体はそう難しくはなく、一番のネックは街の中にある馬車をどうするかというものだ。


 馬車さえ気にしなければ、ルイナ達は壁を登るなりして簡単に抜け出せることが可能だ。実際に山へ調査に行く際はこの方法を取っている。


 だから、リアは一番の問題である馬車を制限の対象外である行商人に扮して出ようと画策したのだ。そこでリアは元々他の街から護衛任務でサレドに来たこともあり、更に信頼性は高まるのでは?と言えた。


「うん、良いんじゃないかな、食料は結構買い込む予定だから疑われにくいと思う」


 現状、規制解除が不透明な段階で街から脱出しようとしたらリアの案が一番可能性が高い気がする。


「・・・・・・随分と王都の騎士団と街の衛兵が仲が悪くなっているようでね、早めに抜け出したい」


 本来は追われる旅ではないので急ぐ必要もないのだが、どうも領主陣営と王都陣営の仲が街で噂になる程度には悪いらしい。


 昨日、キリから送られてきた手紙では、サレドの街の領主であるファスト男爵は駐在する王立騎士団に対して抗議の声を出しており、その波はサレドの騎士団や街を護る警備隊にも波及している。


 一方の王立騎士団も何を探しているのか、街の領主から抗議を受けても聞く耳を一切持たずに街に残っていることから、両陣営は一触即発の空気が漂っていると手紙には描いてあった。


 そのためにも、タクマは大事になる前に街から脱出したい・・・・・・そういう気持ちがあった。











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