恋心トゥンクトゥンク

パ・ラー・アブラハティ

三重苦ですわ〜

 私の名前は美空青葉。普通のごく一般的なそこら辺の石ころと変わらない女子高生。


 そんな、私は今学校に遅刻しそうになっています。制服にまとわりついたフローラルの香りを近所に匂わせながら、パンを口に加えて鼻歌気分で走るの。でも、鼻歌にパンによってせき止められた口呼吸、走ることによる肺への負担で私の呼吸はほぼ無呼吸なの。私は今無呼吸走りをしているの、なんという三重苦ですの、苦しいですわ。


 ああ、目の前がクラクラしてきましたわ。早く学校へ行かなければならないのに。


「って、キャ!」


 私は通学路を真っ直ぐ走っていると、角から出てきた強大な何かに弾き飛ばされましたわ。ゴロゴロと地面を転がりながら、ヒーロー着地を決めて何事も無かったように立ち上がると目の前には私の意中の人、輝先太陽さんが。トゥンクトゥンク、と私の心臓は早鐘を打ちますの。


「あばばばばばば」


「おや、美空さんじゃないか。君も遅刻トゥインルクナイトかい?」


 あぁ、全くもって何を意味している言葉なのか分かりませんけど輝咲さんが私に向かって喋っている、とても心地がいいですわ。耳が宇宙へ踊り出してしまいそう。


「い、いえ。私は朝日スパークルですわ」


「なんと、朝日スパークルとは美空さんも大胆だね」


「そうですの。朝日スパークルの夕方インジェクションですわ」


 ダメですわ、何とか普通を保った振りをしていますけど心はずっとトゥンクトゥンクしてますわ。そうだ、こういう時は手のひらに人を書いて食べるといいってて、爺やが言ってましたわ。では、早速書いてみましょう。


「おいおい、美空さん。急に俺の手を食べてどうしたんだい?腹ぺこ芋けんぴお月様かい?」


 嫌ですわ、私ったら手のひらじゃなくて人の手を食べてしまいましたわ。恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまいそうですわ。


「い、いえ。これは違くて。あ、これハンカチですわ」


「おっと、レディーにハンカチを出してもらうわけにはいかないよ。ハンカチは俺が涙を拭くための物なのさ」


 やっぱりかっこいいですわ、輝咲さんは。益々好きになってしまいますわ。好き、トゥキ、トゥンクトゥンク。


「美空さん、行こう!未知なる学校へ!」


「はい、どこまでもお供しますわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋心トゥンクトゥンク パ・ラー・アブラハティ @ra-yu482

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ