第9話

かと思えば。

嬬恋のれんは懐から何かを取り出した。

それは、鉄扇である。

鉄扇を開くと共に、鉄扇は巨大化した。

嬬恋のれんと同等の身長に変わると共に。

彼女は片手で鉄扇を仰ぐ。

すると、風が巻き起こり、人食い鬼に風が当たる。

瞬間、大鬼の肉体が燃えだした。


「あ、ぎゃああああッ!!」


叫び声と共に崩れ落ちる人食い鬼。

変わらず、嬬恋のれんは離し続ける。


「ああ!?あのなぁ狗神ぃ!」

「この程度の雑魚なんざ」

「話を邪魔する程度の雑魚じゃねえだろ」


そうである。

これこそが、嬬恋のれんだ。

今、この場で会話をする等、危険である行為にすらならない。

それ程までに、彼女の実力は遥かに高い。

それは、狗神仁郎もまた知っていた事だ。

だからこそ、彼は彼女の強さに惹かれたのだろう。


「大型を一発で…」

「…はッ凄ぇな、それでこそ」

「俺が嬬恋さんを選んだ理由だ」


帽子を脱いで、狗神仁郎はそう言った。

まさしく、脱帽と言った様子だ。

しかし、嬬恋のれんにとってはどうでも良い話だ。


「おべっかなんか今は要らねえ」

「さあ、話の続きだ後輩」

「あたしの事はどう思ってんだ!?」


確信に迫る様な事を彼女は言い出した。

それは、心臓を高鳴らせる質問で。

嬬恋のれんにとっては初めての感情でもあった。



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