第2話
そう言って、ベッドの上から出ようとする狗神仁郎。
しかし、そのベッドが、何時の間にか自分のものじゃなくなっているのに気が付く。
「…?」
狗神仁郎は基本的にタオルケット一枚だ。
だが、このふかふかのシーツの質感に違和感を覚える。
はて、一体、自分はいつ、ベッドを変えたのだろうか、と、そう思っている。
周囲を見回す。
そして狗神仁郎は次第に、此処が自分の部屋で無い事を察した。
「…ちょ、と…まてよ…」
記憶を巡らせる。
何か、嫌な予感と言うものをしていた。
自分の姿を見る。
裸だ、普段は、シャツとトランクスと言った格好で眠る狗神仁郎。
上も下も全裸で寝ると言う事は有り得ない。
何かが可笑しい、何か、と思った時。
狗神仁郎の隣で、何かが蠢いていた。
その蠢きに大して、狗神仁郎はびくりと体を震わせる。
「ちょ…まさか」
布団を剥ごうとした。
その時、丁度、布団が剥げる。
「ぬぐ…ふぅ…すぴっ」
全裸になって寝ているのは…嬬恋のれんだった。
その時点で、狗神仁郎は蒼褪める。
…社員と一夜を過ごしてしまったのだと、悟ってしまった。
「ん…んぁ?」
目を覚ます嬬恋のれん。
肌寒くなっていたのだろう、目を開けて体を起こす。
そして、隣に居る、狗神仁郎を見た。
「…」
場が凍る。
嬬恋のれんは大きく目を開いていた。
瞬時に察したのだろう。
自分の胸を隠すのか。
それとも大声で叫ぶのか。
狗神仁郎は身構えた。
先ずは言い訳から口にしようとした時。
「…え、ぁ…う、うぁ…ッ」
かしゅ、と。
嬬恋のれんは、手に持っていた酒缶のプルタブを開けていた。
そして、それを一気に飲もうとしている。
「ま、待て、酒に頼るな、この状況はッ」
と、狗神仁郎は、そう止めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます