第9話

「閻って、何者なんだ?」


狗神仁郎は、願いの内容ではなく。

その人物が何者であるかを聞く。


「…三百年前に存在した非生アスラです」

「いえ…今も存在している、と言っても良いでしょう」


三百年前。

其処まで時間が空いていると、なんだか現実味が無くなる。


「三百年って…それは」


当然、と言った様に。

佐夜鹿紗々も頷いた。


「えぇ、貴方の言いたい事も分かります」

「ですが…この奈落迦では、人間の寿命など意味は無いですよ」

「私達の雇い主、墓瀧さんも、今は三百歳を超えています」


そう言われて、狗神仁郎は驚いた。

確かに、妙齢の女性だとは思った。

色気はあるが、年齢は若くは無い。

しかし…まさか?三百歳を超えているとは。


「禍遺物、中には、肉体の寿命に関する呪詛もあります」

「その気になれば、永遠の命も得られるでしょう」


その代わり。


「永遠の命に匹敵する、呪詛を得るでしょうが」


喉を鳴らす狗神仁郎。

そして話を戻す。


「で…閻は、まだ存在している、と?」

「だったら、直接話を聞く事は出来ないのか?」


「出来ませんよ…閻は」

「願いを叶えたと同時に」

「深蝕転化してしまいましたから」


佐夜鹿紗々は、その様な単語を口にした。

それを聞いた狗神仁郎は、再び疑問に陥った。

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