第8話

狗神仁郎と佐夜鹿紗々。

二人が向かう場所は、大迷宮・奈落迦。

この迷宮には、ある噂が立っている。

いや、それは噂では無い。

巷でにぎわう様な話のタネのようなものであり。

存在するかしないかで言えば、確実に存在するものだ。


大迷宮・奈落迦。

呪いに満ちた迷路。

ここでは、様々な呪詛を得た道具を得られる。

そして、もしもこの奈落迦の最下層へと到達する事が出来れば。


どんな願いもかなえる事が出来る、と言ったものだった。


「果たして、それが本当であるか…」

「と、言う問題ではありません」

「既に、願いを叶えた者は存在しますから」


「俺は新参だけど」

「マジに願いが叶ったんですか?」


狗神仁郎は訝し気だった。

だが、佐夜鹿紗々は表情を崩さず言う。


「勿論、願いを叶えた者は」

「僅か、一人だけ、ですが」


僅か一人。

それを聞いて、狗神仁郎は逆に、信憑性が高まったと思った。


「…それは一体、誰、なんですか?」


狗神仁郎は言う。

佐夜鹿紗々は、冷静な表情を崩す事無く、名前を告げる。


えん、と。願いを叶えた者の名前はそう言いました」

「尤も、その願いの内容を聞いた事はありませんが」


佐夜鹿紗々は口を紡ぐ。

それ以上の事は何も知らないのだろう。

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