第4話

怖ろしい展開であった。

流石の狗神仁郎でも、我が身を冷やす様な状況。

相手がどの様な罵倒の言葉を口にするのか。

それ以上に、今後のパートナー事情も変わって来てしまう。


「悪い、見るわけじゃ無かったんだ」


取り合えず、先手で詫びの言葉を入れる。

佐夜鹿紗々は、体を見られた状態で平然としている。

特に気にしていないかの様子で。


「…?はあ、そうですか」

「いえ、…言わせて頂きます」


やはり、何か思う事があるのだろう。

此方へと接近してくる、佐夜鹿紗々。

狗神仁郎はどうにも気圧されて、下がってしまう。


「お風呂、水垢が多すぎます」

「ちゃんと掃除していますか?」

「病気の元ですよ、これでは」


と、佐夜鹿紗々は、体の事では無く、風呂の事を語り出した。


「いや、別に掃除はしてないけど」


「でしょうね、掃除する部分が多すぎます」

「ある程度、掃除が出来ないのであれば」

「これからは、一緒に掃除をして覚えて頂きますよ」


と、凄んでそんな事を言っていたが、狗神仁郎は頭に入って来ない。

それ以上に。

何故この女性は、全裸の状態で叱る事が出来るのかと言う疑問を浮かべていた。


「…分かった、分かった、取り合えず、服を着てくれ」


「あぁ…そうですね」


そこで、佐夜鹿紗々は頷いた。

まだ言いたい事があったが、困り果てた表情をした狗神仁郎を認識した事で。

裸が苦手なのだろうと、察したらしい。

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