二十七輪目

 なんて思っていたけれど。


「それで、夏月と……優くん、だっけ? どうやって出会ったのさ」

「私よりも先に、ハルが優君と出会ってるんだよね」

「え? マジ?」

「春ちゃん、夏月ちゃんに横から一番を取られちゃったんだ」

「秋凛、後でちょっとオハナシしよっか」


 準備を終えた後、夏月さんの誕生日を祝って乾杯をし、みんな普通に楽しんでいる。

 ……いや、何も悪い事じゃないんだけども、さっきまであったやり取りは無かったことになったのだろうか。


「最初は……自分がスタジオの見学に行った時、ですね。高瀬さんから声をかけていただいて」

「アウト」

「アウト、だね」

「やっぱりそうだよね?」

「いやいやいや、みんな同じ立場なら声かけるでしょ! それにちょっとお話ししようとしただけだもん!」


 何故だか分からないが、出会いについて俺から話す空気に感じた。

 珍しくその読みは間違っていなかったが、少し話して止まってしまう。


 高瀬さんの反論? にはみんな目を逸らし、何も聞かなかったことにしていた。


「優くん、続きをお願い」

「あ、はい。そのあとに高瀬さんからサインを頂いて。次の日にそれを入れる額縁を買いに出かけ、知らない人からDMが来たので会いに行ったら高瀬さんがいた、みたいな」

「春、二アウト」

「これはいけないよねー」

「ハルもそうだけど、優君も無警戒が過ぎる気がするよね」

「だ、誰だってファンって言われたらこうするでしょ! 後、桜くんが無警戒すぎるのは私も思うな!」


 何故だか俺にまで飛び火が来た感じがするけど、今日初めましての月居さんと樋之口さんは俺のことをよく知らない為。

 話はそのまま流され、続きを促される。


「そこでお昼食べながら話してたら夏月さんが来て、そのまま三人でって感じですね」

「優くんと夏月が出会ったのは春のおかげでもあったわけね」

「ここから夏月ちゃんのターンが始まるのかな?」

「えっと……はい、そうですね。場所を変えようと、夏月さんの家に招待されました」

「…………ん?」

「ごめんね。よく聞き取れなかったから、最後の部分だけもう一回言ってくれるかな?」

「え? あ、はい。夏月さんの家に招待されました」

「うわ、聞き間違いじゃなかった」

「これは一発退場じゃないかな?」

「いや、いや! ずっとお店にいるのも悪いし、たまたま私の家が近かったから! それにハルも居たし!」


 月居さんと樋之口さんは何やら話していたが、取り敢えず続きを聞こうという結論に落ち着いたらしく。

 どこから取り出したのかイエローカードを一枚、夏月さんに手渡している。


「それじゃ、続きを」

「えっと……その日は三人でゲームしたりして終わりですね」

「帰り道か次の日に、夏月から遊びの誘いでもあった?」

「すごいですね。帰りに夏月さんから遊びの誘いがありましたよ」

「そりゃ、この結果を知ってれば大体そんなところでしょ」


 言われてみれば、それもそっかという感じである。

 今こうして同棲し、指輪まで嵌めているんだもの。

 ……結構、色々とすっ飛ばしている気が今更ながらにしてきたな。


「でも、あの時は驚きましたよ。まさか泊まりだとは思っていなかったので」

「「「…………は?」」」






───

あくまでこの作品における設定になります。

その事を念頭に置いていただけると幸いです。


この世界では一応、同性婚が認められていますが、色々と条件があります。

条件の一部ですが、女性同士であるのならば子供を二人以上作る、男性同士ならば種の提供など。(そうでもしないと滅亡へのカウントダウンが早まる為)

こればかりは説明を短く終えます。

これ以上は感想か活動報告に質問が来た場合、その返信で吐いていきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る