二十五輪目

 いつの間にやら眠っていたようで、目が覚めたとき俺は全裸であった。

 隣を見れば同じように全裸で眠る夏月さんの姿が。


 それで昨夜、何をしたのか思い出し、恥ずかしさが込み上げてくる。

 言葉で分からなければ行動で示すって、もの凄くバカっぽい行動であったが、これで解決したのもまた事実。


「…………ん」

「おはよう、夏月さん」

「あ、優くん。おはよ」


 気持ちよさそうに眠る夏月さんの顔をよく見たくて前髪をどければ、起こしてしまったようだ。


「これ、掃除しなくちゃね」

「……えへへっ」


 自分や夏月さんの身体は色んなもので汚れており、シーツに至っても酷い有様だ。

 ずっとこの部屋にいるため今の俺たちには分からないが、匂いも大変な事になってるいるだろう。


 取り敢えずパンツだけ履き、窓を開けて換気。

 昨日の様子が嘘のように嬉しそうな夏月さんを先にシャワーへ送り、シーツなど部屋の中を簡単に片付けていく。


 区切りがついたところで夏月さんが出てきたので、入れ替わるようにして俺もシャワーを浴び。

 サッパリしてリビングへ向かえば、夏月さんが俺のためにコーヒーを淹れてくれていた。


「あ、そうだ」

「ん?」

「これ、誕生日プレゼント」


 雰囲気も何もないが、今でないと忘れてしまいそうなのでさっそくプレゼントを渡せば、夏月さんは驚いた表情で俺を見てくる。

 受け取ったまま動こうとしないので、一度俺の手元に戻し。

 まずはネックレスから取り出して夏月さんに付けてあげる。


 そして次に指輪だが……うん。


「あ、えっ……えっ!?」

「自分としてはこういう気持ちでいるから……その、これからもよろしく」

「うん、うん! すごく嬉しい!」


 左手薬指にはめられた指輪を眺めて嬉しそうな表情をしている夏月さんに、俺も少し安心した。

 結婚までは考えていない、とか言われたらどうしようと思っていたりしたのだ。


 一応、ペアリングとして自分のも買ってあるが、指に何かつけているのが合わないため。

 別途チェーンを買い、首から下げている。


 五年ほど会っていないが、親経由で幼馴染が結婚したという話は耳に届いており。

 もう結婚か。俺もそのうち相手とか見つかるのかな、なんて他人事のように思っていたけど。

 まさかこうなるとは夢にも思わなかった。

 ……いや、何度かこういった妄想したりしたけども。


「それでなんだけど、実はプレゼント以外に何も用意してなくて。今日一日、夏月さんのしたいことやっていこうかなって」

「あ、それなら大丈夫! 誕生日の人の家に休みのメンバーが色んなもの持ち込んで、パーティーやるから!」

「それって、これからメンバーの誰かが来るってこと?」

「そうだよ?」

「……ちなみにいつ頃? 何人?」

「んー……来るのは三人で、あと三十分もあれば着くって」


 現在時刻は十一時。

 集まって、準備して、さあ始めようって時には昼のいい時間ってことか。

 なるほどなるほど。


 いや、そんなことはどうでもよく。

 え、これからここに集まると?


 普段からあまり汚さないようにしてきたため、綺麗ではある。

 綺麗ではあるのだが、一室は大変なことになっているのだ。


 まあ、寝室であるし入るような事もないだろうが、片付けて損はないだろう。


「…………うっ」


 シャワーを浴び、綺麗な空気を吸って鼻がリセットされたからだろう。

 窓を開けて換気していたとはいえ少しの時間であるため、まだ臭いが残っている。


 取り敢えず出来るところからと、先程後回しにしていたことを片付けていく。

 臭いは最後にファブって誤魔化せると信じ、洗濯し終えたシーツなどを外に干したところで時間一杯である。


「優くん、大丈夫?」

「……このまま寝たい気分」

「それなら私、外に出たほうがいい?」

「いや、夏月さんの誕生日だもの。俺のことは気にしないでいいよ」


 よっこいせと、まだ二十前半なのにおじさんみたいな声を出しながら立ち上がったところで、来客を告げる音が鳴り響く。


「はーい!」


 元気よく玄関へ向かう夏月さんを少し遅れて追いかけていけば、ドアを開けるタイミングであり。


「お誕生日おめでとー!」

「「おめで──おとこ?!」」


 入ってくるとほぼ同時にクラッカーの音が鳴り響き、お祝いの言葉を述べているが。

 高瀬さんは最後まで言い切ったのに対し、月居つきおりさんと樋之口てのくちさんは俺の存在を認識するなり驚きで固まってしまっていた。






───

「ひのくち」と書いて「てのくち」と読みます。

正しいかは分かりません。

調べたら出てきたので合ってると思います。

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