二十四輪目
えっと……どういう事だろう。
夏月さんが仕事帰りにタクシー乗ったら俺と高瀬さんを見かけ、声をかけようとしたらプレゼントを渡していたと。
……ああ、なるほど。
「あれは三月にあった高瀬さんの誕プレと、長い間買い物に付き合って貰ったお礼ですよ」
どんな理由で渡していたか知らないから、俺が高瀬さんの気を引こうとしていたと勘違いしたのか。
これからは事前にどんな事をするか前もって説明しておいた方がいいのかもしれない。
でも、高瀬さんと会う事自体は気にしないって前に言っていたような。
……夏月さんの考えはよく分からないな。
「理由は何だっていいの。ハルにアクセサリー、プレゼントしたんでしょ?」
「しましたけど……」
俺の中ではスッキリしたのだが、まだ何か俺の気付いていないズレがあるらしく。
未だ悲しそうにしている夏月さんに変化がない。
「すみません、夏月さん。自分がした事で今こうなっているのだろうってのは分かるんですけど、何が原因なのかサッパリ分からないんですけど……」
「…………優くんは、好きでも無い人に装飾品をプレゼントするの?」
「いや、そこまでの人にはもっと手軽なものですよ」
「ほら、ハルは特別な人なんだよね?」
「……? まあ、推しですから。未だに自分と友達だなんて信じられないですよ」
「…………」
「…………」
「…………」
ズレを無くすため、正直に聞いてみたはいいものの。
求めていた答えは返ってこなかった。
きっと遠回しに伝えてくれているのだろうが、偏った知識しかない俺に分かるだろうか。
好きでも無い人に装飾品をプレゼントするのか。って問いかけに、しないと答え。
高瀬さんは特別な人なんだと返ってきた。
つまりは高瀬さんに装飾品をプレゼントするって事は、好きなんだよねって事だろう。
まあ、推しなのだから当然そうだ。
あ、なるほど。
チェーンブレスレットならまだしも、指輪はさすがにいけなかったか。
未婚とはいえ男性が女性に指輪を渡すなんてのは考えなしが過ぎた。
「夏月さんの言いたかった事、やっと分かったと思います。自分の考え無しな行動で不安にさせてすみません」
「ううん。私も少し強引に進めたところがあるし……短い時間だったけれど、とても楽しかったよ」
「……夏月さん、もしかしてまだ自分が別れたいと思っていると?」
「だって、そうなんじゃ無いの?」
何故、夏月さんがまだそんな考えでいるのか分からない。
……いや、自分の言葉が全て相手に伝わっているという思い込みから間違っているのだから、その認識から改めないと。
けど、これ以上言葉を交わしたところで夏月さんに上手く伝えられるとは思えない。
「…………よしっ」
「へっ? ちょっ、優くん?」
少し恥ずかしいが気合を一つ入れて立ち上がり、夏月さんの手を取って寝室へと向かう。
───
夏月にパートナーができたという話が噂で広がっている。
引っ越し業者から漏れることはないが、引っ越しを行ったことは周りに知られているため。
人の口に戸は立てられないので仕方ないが、男性に不利益な情報が流れると罰せられるため、ネットの民もそこら辺は理解しながら掲示板で盛り上がっている。
だがつい先日、春が男性(主人公)から装飾品をプレゼントされていたのを大勢の人が見ており、話の流れは全部そっちに持っていかれた。
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