第2話 「悪魔VS天使」の謎。「シールを手に入れたらチョコを捨てた人」は、「悪魔ドラフト」でやばいことになるのかもしれない…。

 な、何だ?

 何だ、こいつらは…?

 ケツから、しっぽを出している者もいた。

 物陰に隠れ続ける、俺。

 やばそうな者たちが囲むテーブルの上に、ペットボトル大の立て看板が立てられる。

 「悪魔ドラフト」

 そうか。

 悪魔、か。

 着ている服、身体から発せられるオーラからして、フツーとはちがって感じられたわけだ。

 悪魔たちの中のだれかが、静かに、しゃべりはじめた。

 「…さあ、よろしいでしょうか?今年も、ドラフト会議をおこないたいと思います」

 …何だって?

 本当に、ドラフトがおこなわれるのか?

 「ドラフト」

 それって、プロ野球などで見られる、選手の引き抜き合戦のことなのか?

 「かつての名選手だった監督たちが、その年に大活躍していた選手を獲得するため、抽選箱に手を伸ばす」

 ドラフトというのは、簡単にいってしまえば、そんな、ある意味なごやかなくじ引き会議のはずだった。

 そこにきて、「悪魔ドラフト」?

 怪しい者たちの口が、開かれる。

 「この人間は、どうしますかね?」

 「キヒヒヒ…」

 「こいつは、いらないな」

 「ああ。あんなことを、していたんだからな」

 「消しますかね?」

 「いや。あの球団が、獲得するんじゃないか?」

 「それじゃあ、命だけは取らずに」

 「ええ。とっておきましょう」

 その声を聞いて、俺は、恐ろしくなってきた。

 そこで、俺は、失敗。

 「…あれ?どこに、いったんだ?」

 やつ、ミヤモトの姿を、見失ってしまったのだ。

 悪魔たちが集まる部屋の中で、とんでもない会話が飛び交い続ける。

 「…この人間を、ほしいですか?」

 「私は、いらないね」

 「この人間には、シールだけを抜き取ってチョコを捨てていた、例の前科があるようですなあ」

 「あれは、やってはいかん」

 「NEUTRAL球団に、放りこみましょうか?」

 「いや、ダメだ」

 「それじゃあ、CHAOS球団ですかね?」

 俺は、青ざめるばかり。

 「悪魔VS天使」

 だれかが、謎の言葉をつぶやきはじめた。

 それは、ビックリするようなチョコレート菓子でも、その菓子についているおまけのシールのことでもないだろう。

 そのときだ!

 俺は、思い出した。

 「…あ。悪魔VS天使!俺、子どものころに、シールを手に入れて菓子を捨てるだなんていう、悪魔VS天使の罪を犯していた気がするぞ。まずい…」

 声に出さず、ブルブルと震える、俺。

 この悪魔ドラフトは、その罪を裁く会議なんじゃないのか?

 「こうなったら、何かに祈りをささげて、救ってもらうしかない!」

 俺は、直感した。

 祈れ、祈れ!

 CHAOSっぽいな奴らに、大きな一撃を与えろ!俺に、LAWの心があったらの、話だが…。

 無意識に、天使のことを考えてみた。

 すると…。

 どうしたことか?

 俺の脳裏に、パジャマ姿の女の子が、現れたのだ。

 「…あれ?」

 一瞬、時間が止まる。

 脳内画面に、釘付けになってしまう俺。

 「あれ?これって、あのアイドルの子に、似ていないか?」

 「天然少女」としてデビューして、もてはやされた子がいたのを思い出した。

 毎日放映されるようなTVドラマにも、出演していた。子ども番組の司会も、こなしていた。グラビア写真の常連でも、あったはず。

 だから、俺は、その子の顔に見覚えがあったのだ。

 「その子そっくりな女性が、なぜ、今、俺の目の前にいるんだ?」

 いつだったか、友人とした会話が、よみがえってきた。

 「知っているか、サトウ?」

 「何が?」

 「消えたアイドルって、いるだろう?」

 「消えた、アイドル?」

 「ほら」

 「何だよ?」

 「大人気で、いつもTVで見ている子がいたとして、さ」

 「いたとして?」

 「最近は、見なくなったなあ。あのアイドル、役者、芸能人、どうしちゃったんだろうなあっていう人、いるじゃないか」

 「ああ、いるな」

 「もしも、その人が…。って、思ったことはないか?」

 「if?」

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