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可愛い女の子がニヤニヤと笑いながら私の顔を覗き込んできた。




「お兄ちゃん、こんな美人さんと知り合いなの!?

凄いじゃん!!」




「煩くてすみません、俺の妹です。」




「そうなんだ?何番目のごきょうだい?」




「3番目ですね。

で、あっちは2番目の弟で。

ここはこの2人が開いたお店でして。」




「そっか、だからあの男の子とはお顔が全然似てないのか。」




頷きながら、幸治君が指差した方にいるカウンターの向こう側に立つ強面の店員さんを見ると、店員さんは・・・幸治君の弟は、凄く驚いた顔で私のことを見ている。




それには首を傾げながら幸治君に視線を移すと、幸治君は普通の顔でグラスに入ったビールを飲んでいる。




「お兄ちゃん、うちの話をお姉さんにしたんですね?

お兄ちゃんってそういうことは絶対に言わないタイプだから驚きました。」




幸治君と血の繋がっている妹が可愛い顔で私に笑い掛けてくるので、私は苦笑いになる。




「私は幸治君より7歳も年上だし、幸治君と出会った時、私は24歳で幸治君は高校2年生だったからね。

7歳も年上の私が・・・」




目の前にある醤油ラーメンを見下ろしながら小さく笑った。

見た目も香りも私が知っているたった1つの醤油ラーメンと全く同じ、そんな醤油ラーメンを見下ろしながら。




「幸治君の前では全然お姉さんじゃなくて、いつも愚痴を言ったり文句を言ったり弱音を吐いたり。

そんなことをしてたら幸治君も色々と話してくれて。」




そう言ってから幸治君の妹を見上げた。




「2人とも、4年制大学を奨学金を貰わずに通ってたよね?

下の5人のきょうだいに苦労を掛けないよう、幸治君は中学生の頃から新聞配達をして働いて、高校は定時制に通って、高校生の頃からご両親が営んでいた中華料理屋のお店を継いで。

4年制大学、それも偏差値の高い大学に通ってたのに2人ともラーメン屋さんで働いてるんだね?」




オフィス街に建ち並ぶお店の1つ、“ラーメン 安部”。

幸治君のご両親が営んでいた“中華料理屋 安部”で、まだまだ子どもだった幸治君が下のきょうだいの為に、下のきょうだいのことを想い、コツコツと頑張っていた姿を思い浮かべながらそう言った。

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