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「マジかよ、めっっちゃイケメンじゃん・・・。」




私の隣にいた男の人が小さな声で呟き、慌てたようにお店から出て行った。

それを確認した後、私は大きな溜め息を吐きながら幸治君をまた見下ろす。




「急にごめんね、駅まで男の人がついてこようとしてて。」




私のことを見上げなから凄く驚いた顔をしている幸治君に謝る。

幸治君は少しだけ瞳を揺らした後、手首についているブランド物の腕時計を見下ろした。




「金曜日ですしこの時間は酔っ払いも多いですからね。

駅まで送りますよ。」




そんな優しい言葉を掛けてくれ、でも私は幸治君の前の席にゆっくりと腰を下ろした。




「私もラーメン食べていこうかな。

一緒に食べてもいい?」




「・・・俺は大丈夫ですけど、時間大丈夫ですか?」




「うん、これから家に帰るだけだから。」




笑いながら幸治君に言うと、幸治君は凄く驚いた顔をしながら私を見詰めている。




光沢の加減で高級なスーツだと分かるスーツ姿で、私を見詰めている。

幸治君に笑い掛けた後、カウンターの向こう側にいる強面な店員さんに声を掛ける。




「すみません、オススメは何ですか?」




店員さんに聞くと、店員さんはニヤニヤと笑いながら「醤油ラーメン!!」と教えてくれた。




それを注文した後、食べ掛けの餃子と瓶ビールとグラスがのっているテーブルを見下ろす。




「ラーメンは食べないの?」




「そうですね、今日は金曜日ですしお酒を飲みたくて。」




「お酒とか飲むようになったんだね。」




「金曜日だけはたまに飲んでます。

職場がここら辺なのでさっきまで他の人達とご飯を食べてたんですけど、職場のトップの人がお酒は飲むなって煩いので、お酒が飲みたい時は1人でここに来ています。」




「職場のトップの人・・・」




私は呟きながら幸治君を眺める。

楽しそうな顔で笑い、高級なスーツとブランド物の腕時計、お洒落にセットされている髪の毛をしている幸治君のことを。




幸治君に笑い掛けながら聞く。




「なんだか別の人みたい。

中身まで変わっちゃったかな?」




私が聞くと幸治君は真剣な顔で私のことを見詰め返してきた。




「はい、変わりました。」




「変わっちゃったの?

それは少し悲しいな~。」




「俺も24の年なので、いつまでもガキのままではいられないですから。

ちゃんと働いて、ちゃんと稼いで、それで・・・」




幸治君が言葉を切った時、私の目の前に可愛い女の子がラーメンを置いてくれた。




「お兄ちゃんのことを好きになってくれた女の子のことを“可哀想”って言われないようになるんだよね?」

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