第7話 三兄妹の長男はかわいい次女に夜這いしたが失敗したことを聞いた長女の決意

~エミ視点~


 あたしはおねえとお風呂に入った後、普段通りに過ごした。


 おにいのことは頭にちらついていたけど、気にしない風に振舞った。


 おにいも話しかけてこなかったし、わたしもおにいには話しかけなかった。


 その日の夜は、普通通りに眠った。


 が、すぐには寝付けなかった。


 ベッドの中で、眼だけ閉じているその時。


 ぎ、ぎ、ぎ


 ドアが開くような小さな音。


(だれ……?)


 声には出さなかった。


 風の音かもしれない。


 ドアを閉め忘れたのかな?


 そう考えたその瞬間——


 部屋の中をペタリペタリと小さな足音が響いた。


 すぐにあたしは飛び起きた。


 すると人影は動きを止めた。


 その人影は、小さな声で、「エミ―」とつぶやいた。


「おにい……?」


 部屋は暗く、姿は見えないものの、声もシルエットも間違いなくおにいだった。


 そしておにいは、特に何もしないまま、部屋から出ていった。


***


~サチ視点~


「おねえ……ちょっと相談なんだけどさ」


 朝、エミちゃんがわたしの部屋に尋ねてきました。


 わたしとエミちゃん以外、この場にいません。


 エミちゃんが、二人で話がしたいと言ったからです。


「相談ですか?」


 深刻そうな顔で、コクリとうなずきます。


「あのね……」


「はい」


「おにいがね……あたしが寝てるときに、部屋に勝手に入ってきたの」


「——え」


「おにいがね、夜這いしようとしてるんじゃないかって……」


「そ、そんな……信じられない……」


 わたしはとってもショックでした。


 おにいがエミちゃんに手を出そうとした?


 夜這いだなんて……そんな無理やりな方法で……?


「あたし、嘘ついてないよ……本当……」


「……本当、なんだよね? 絶対に嘘ついてないんだよね?」


「うん」


 確かにエミちゃんはお兄様のことを鬱陶しく思っています。


 しかし、そういう嘘を吐く子なんかでは決してありません。


 わたしは、お兄様のことを信じたい気持ちがあるのと同じくらい、エミちゃんのことを信じているのです。


「——わたし信じる」


「! ほんと? おねえ」


「もちろんだよ」


 エミちゃんの顔がぱぁと明るくなりました。


「わたしと一緒に、お兄様とお話ししましょう」


「うん!」


 わたしとエミちゃんはさっそく、お兄様の部屋に向かいました。


「お兄様、エミちゃんのことでお話しがあります」


「……」


 部屋から声はありませんでしたが、わたしはドアを開けました。


 中に、お兄様がベッドで横になっていました。


 わたしとエミちゃんは部屋に入り、お兄様の近くまで移動しました。


「お兄様、エミちゃんから相談されたことなんだけど……」


「うるせぇな……」


「……夜にエミちゃんのお部屋に入ったって本当かな?」


「うるせぇって」


「何をしようとしたのか、教えてほしいの……お兄様」


「…………」


 お兄様は一言も話さなくなりました。


 ふとんで顔を隠して、どんな顔をしてるのかもわかりません。


「っ、クソおにい……黙ってないで返事ぐらいしてよ。何考えてんのか分かんないよ」


「エミちゃん」


 わたしは怒り出しそうなエミちゃんを止めました。


「おねえ……」


「お兄様、お話し聞いてくれてありがとね。すぐに出ていくね」


 わたしはエミちゃんを連れて、部屋から出ました。


***


「おにい……これで懲りたかなぁ……」


 エミちゃんは心配そうな様子です。


「わたしに考えがあります」


「おねえ?」


「夜、わたしがエミちゃんの部屋を見守る。そして、お兄様が来たら説得する」


「え!?」


 エミちゃんは驚きます。


「そ、そんな悪いよ……」


「ううん、お兄様が何を考えているのか、わたしは知りたい。

 お兄様は本当はとっても優しい人。もし、お兄様が何かに苦しんでるのなら、わたしはそれを取り除いてあげたいの」


「おねえ……そんなことできるの……?」


「分かんないけど、やってみる。お兄様の妹として出来ることがしたいの!」


「おねえ……わかった」


 エミちゃんも前向きな表情です。


「おねえなら出来るよ! 応援してる!」


「わたしも頑張るよ! エミちゃんとお兄様の為に!」


「ファイト!」


「おー! わたし!」


 そしてわたしとエミちゃんは、お兄様とお話しする作戦を考えたのです。

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