第3話 三兄妹のお兄様とエロゲ―で大人の階段のーぼるーしたかったなぁ……(遠い目)

「はぁ……お兄様……」


 わたしの心はまるで灰色の雲のようです。


 お兄様との関係が、上手くいきません。


「ああ、このままではわたし、人生に絶望して闇落ちしてしまいそうです……」


 お部屋の中を、落ち込みながら、ふらふら幽霊のように彷徨ってるわたし。


 そんな時だった。


 ガチャン、と部屋のドアが開けられたのです。


「なぁサチ」


「はぁ……お兄様……お兄様!?」


 何と、お兄様から話しかけてくれたのです!


 心の灰色の雲が晴れて、虹色の空模様になりました!


「どうしましたかお兄様! サチをお求めですね! わたしお兄様の為なら何でもするからね!」


「一緒にゲームしないか?」


 あああああああ!!!


 つ、ついに、お兄様がわたしを誘ってくれた!!


「やります!! やります!! 一緒に遊びたいです!!」


 二つ返事でOKするわたし。


「そんなに嬉しいか?」


「はい! わたし、ずっと待ってました! お兄様とゲームしたくてたまりませんでした!」


 これまでずっと妹のエミちゃんにばかり構っている様子でした。


 ずっとわたしは疎外感を感じていました。


 大好きなお兄様が好きな人は、わたしではなくエミちゃんだって思っていました。


 でも、そうではなかった!


 それが分かっただけでも、わたしにとって、とてもうれしいことなのです。


「……ふん、まあいい」


「それでゲームは、いつもお兄様とエミちゃんが遊んでるモモンガハンターですか?」


「ちがうぞ……このゲームだ」


 そしてお兄様はわたしにパッケージを手渡しました。


「!? こ、こここ、これって……」


 パッケージには、肌を露出した女の子キャラクターばかりが書いてありました。


 そしてお兄様は微笑みながら言いました。


「18禁ゲーム……つまりエロゲ―だ(ニチャア)」


「ほ、ほええええええ!!」


***


~妄想~


『あああん! すごい! 気持ちいよう!』


 画面の中で美少女が性行為する。


「よく見てごらんサチ。これが大人の遊びだよ」


「お、お兄様……これ、すごい……」


「俺もサチと、大人の遊びをしたいなぁ」


「ああん! お兄様、そこは女の子の大事なところ……!」


「よく画面を見てごらん。好き同士の異性なら、いいんだぜ?」


「あああ、お兄様! おにいさまぁ~!」


***


〜現実〜


「こほん……お兄様」


「どうした? やめるか??(ニチャア)」


「やります」


「……まじ?」


「まじです」


「そんなにエロいのが見たいの? スケベか?」


「べ、別にスケベじゃありません! お兄様と遊びたいだけです!」


「……あっそ」


 がーん。


 なんか変な妹だと思われて、正直ショック……


 お兄様は背中を向けて、部屋から出ました。


「お兄様?」


「……」


「あ、エロゲ―だから、お兄様の部屋でやるのですね!」


 わたしは寡黙なお兄様の背中を追いかけ、お兄様のお部屋に入るのでした。


「お兄様のお部屋だぁ」


「……」


 なんだか久しぶりに入りました。


 エミちゃんは毎日遊びに入ってますが、わたしはあまり呼んでもらえないので入れないのです。


「……」


 お兄様はPCの電源を入れました。


「あ、椅子が一つしかないですね」


 PCデスクには、お兄様が座ってる椅子が一つだけ。


 わたしが座る場所はありません。


 いいえ、正確には一つあります。


「お兄様」


「あ?」


「お兄様のお膝の上、座ってもいいですか……♡」


「却下」


「がーん!」


 仕方がないので、わたしは自分の部屋から椅子を持ってきて、お兄様の横に座るのでした。


「楽しみだなぁ! お兄様とゲームするの!」


 そして、ゲームが始まりました!


~2時間後~


「……(エロシーンが……ない……?)」


 エロゲ―と言えば、ちょっと大人向けが描写がある恋愛ゲームだと思っていました。


 わたしは、お兄様のとなりにちょこんと座って、一緒に画面を見ながら大人の遊びをするものだと、思っていました。


 お兄様とエロゲ―を始めてからかれこれ2時間。


 映る画面に美少女はいるけれど、立ち絵だけです。


 SLG(戦略的なシミュレーションゲーム)。


 そう、エロシーンに入らないまま、ずっとSLGをしているのです!


 2時間ずっと、大名になった主人公が政策したり戦したりして、勝った負けたを繰り返すだけ!


 恋愛は——? ラブラブは——? エロシーンはどこに行ったの!?


『殿様、ご采配を』


「まずは年貢の量を上げて国力を上げてと……さてと、ついに武田を攻め滅ぼす時が来たようだな」


「……あの、お兄様」


「ああ?」


「その……エロゲ―なのにエロが始まらないのですが……」


「エロゲーのエロはおまけに決まってんだろ」


 エロゲ―なのに!?


「俺様が最強の軍団を作って、敵の全軍ぶっ潰して、天下統一。

 そっちのほうが気持ちいんだよ、ふはははは」


「それって普通のゲームでもいいんじゃないでしょうか……」


「ちっ、面白けりゃどうでもいいだろ……そんなにみたけりゃ見りゃいいじゃないか」


「え」


 お兄様はセーブした後、タイトル画面に戻りました。


 そして、エロ回想ボタンにカーソルを当てました。


「エロ、見たいんだろ?」


「あ、あわわわわ」


 つ、ついに、お兄様から性的なことに誘われました!


 お兄様のドスケベ!


 実の妹になんて破廉恥な!


 ああ、でもそれでいい!


 わたし、お兄様のためならば!


 Hな妹になってみせます!


「見せねぇよ、ばーか」


 そしてお兄様はデータをロードして、SLGを再開しました!


「あああ、そんなぁあ……意地悪です、お兄様……」


「ふはははは、これから武田軍を滅ぼしてやるよ。はははは」


「……お兄様」


——確かに、自分の思ってたような遊びではなかったけど


——お兄様と一緒にゲームを楽しめて、うれしいなぁ


「わたし、お兄様が武田軍を滅ぼすまで一緒に見守ります!」


「……あっそ」


 そしてゲーム画面を見守る。


 人事、政、交渉、軍略——


 難しい言葉ばかりのゲームを、必死についていきました。


 そして武田軍をあともうちょっとのところまで追い詰めていきました。


 そして——


「あ、エロシーン始まった」


 わたしはついに、お兄様とご褒美エロシーンを見ることができたのです!


「おおおおおお、お兄様、これがエロシーン!」


 うれしくて、あまりにもうれしくて。


 小鳥のように小躍りしそうになったその瞬間——。


「おにいー。おねえはどこー?」


 エミちゃんが、ドアを開けて入ってきたのです。


「「あ」」


「あれ? おねえ、そんなところで何を——……」


 その場を去るエミちゃん!


「ママ、パパ! おにいとおねえが、エッチなことしてるー!!」


「わー!!! 違う!! 違うのよエミちゃん!!」


 その後、家族会議が始まり、数日間のお兄様接触禁止令が出されるのでした。


 七夕の彦星織姫のような気持ちになりました……。

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