ep5:【第一回】『一文創作』~書き手の数だけ物語がある!~
「燕子花様」氏
企画名【第一回】『一文創作』~書き手の数だけ物語がある!~
テーマ:夏目漱石「吾輩は猫である」の一文を引用し、ここから先の物語を書く。
注意:ど素人文学、前回episodeとキャラは同じですが初見さんでも楽しめるよう努めています。
タイトル:「いつかの季節にさよならを……」
〈day1 /12:30 / 時雨学園・食堂にて〉
白鷺:「吾輩は猫である……。それはなぜか?」
東雲:「それは……、すぐ好きな子にほっぺをすりすりしてしまうから……!」
そう
その時、
そして、渚沙はなんだかお母さんみたいだ。渚沙はお嬢様のような立ち振る舞いでザ・優等生なのだ。ただその優等生を超えてママみたいになるときがある。その時、大きくて栗色の目が荒んでいる。そんな気がして、なんだか、怖い。
東雲はそう内心を隠しながらもちろん笑顔で
鴻池:「わ、私は朝日ちゃんの、好きな子じゃ、なかったんですね……、じゃあ、私はこのサンドイッチで喉を詰まらせて死ぬので、葬式には来てください、そして私との思い出を抹消、抹殺、殺害していたたけば……」
ところでこの
東雲:「ストップ、奈波ちゃんストップー!!!」
そう「湯けむり(?)クロワッサン殺人事件」が起きそうなところを東雲は麦茶片手に
東雲:「あ、ご、ごめん!」
白鷺:「これぞ、生麦茶事件!」
――ちょ、笑わせないで!
真保渾身のボケにどうにか耐えながら、とっさに謝った。だが奈波の目はすでに荒んでいた。胸元にこぼれた麦茶を渚沙はどこからか出したナフキンで拭いてあげている。さすが優等生。我らが渚沙ちゃんだ! まあ、真保自生のネタににやついてるのは見なかったことにしよう。
すると奈波は麦茶がこぼれたところを鼻に近づけた。霧が晴れてもみれないような満面の笑みで私に言う。
鴻池:「あはは、何度拭いても拭いても、(匂いが)落ちないや……」
――なんか殺人犯みたいなこと言ってる……⁉
それに顔を背けるのは隣の真保だった。笑いをこらえようと背中あたりがピクピクしている。どうやら彼女のツボにはまったらしい。
鴻池:「ありがと、渚沙ちゃん、でも私の事は良いから、早くしないとスープ冷めちゃうよ?」
食堂のメニューが天蓋突破している我が私立時雨学園。今日のランチは私が「大人のためのお子様ランチ」、真保が「釜揚げうどん」、奈波は「サンドイッチ+エナドリ」、そして渚沙は「フレンチトースト+ミネストローネスープ」だ。中でもこの食堂の七不思議、やけにうまいミネストローネスープにも上げられるスープのクオリティーは世界一ぃぃぃ!!
そのうまさを知るが、課金で金がない鴻池は相棒のエナドリを早飲み。サンドイッチもわずか5口で食べきってそそくさとスマホを開いていた。
宮道:「ありがと、でもちょっとお腹いっぱいだから、半分飲んでくれない?」
すると
白鷺:「ねぇ、朝日、私達元々何してたっけ?」
困惑する真保が耳打ちで聞いてきた。それに私は答える。
東雲:「柏先生の国語の授業、題材は夏目漱石作の『吾輩は猫である』だった。そこで私は吾輩は猫であるという大喜利を披露した。じゃなかったっけ?」
そう耳打ちで返す合間にも、病み奈波の口元にミネストローネスープの入ったカップを持っていく。
すると鴻池は口元を両手で覆い被った。半秒後に「へくしゅ!」とくそ可愛いくしゃみ、その勢いのまま宮道の両手に持ったカップに激突。その際にミネストローネスープを鴻池は頭から被ったのだった。
東雲:「ちょっ!?」白鷺:「うわーぁ……」
2人は各々声を漏らした。宮道も無論、ビックリしていたが、その惨状に何故か心配は生まれなかった。
鴻池:「あはは、血だらけになっちゃった……!」
頭から真っ赤な液体を被った少女は所々トマトのせいで犯行現場の犯人と思わしき姿に変貌。この何とも言えない笑顔を見ていると無性に面白く感じる。
宮道:「あはは、ご、ごめんなさ、あはは……」
そう渚沙が笑いながらも謝罪していたが、奈波の酷い状況に思わず笑っていしまっていた。
その後の授業、隣席から異様にトマト臭が蔓延したのは笑い話でいいのだろうか。奈波は「テロだよ」と笑顔で答え、渚沙に放課後までくっついて過ごしたとか。トマト臭で眉がピクピクしていた渚沙の顔はなんとも言えないものがあった。
白鷺:「ところで、大喜利チャレンジ。吾輩は猫である、その理由は?」
鴻池:「吾輩は猫である。理由はご主人様にくっつくからである!」
そう犯人は供述しており、その後、警察の慎重な調査が進められています(嘘)。本日のニュースでした。
〈day2 /12:30 / 時雨学園・食堂にて〉
昨日の霧が晴れたカフェテリア、お天道様は顔を出していた。いつもの4人パーティーで食事をとっていた。途中、トイレで宮道が席を外していたなか、東雲は昨日と同じお題を出してと白鷺に頼んだのだった。
白鷺:「吾輩は猫である……。それはなぜか?」
東雲:「それは……、……むかついたやつに必殺の猫パンチをくらわすから!」
鴻池:「なんでや! その理屈でゆうたらヤンキーどもみんなかわええ猫になるやろ!」
大阪弁の鴻池が泣く子も笑うツッコミを決めると東雲は目をとがらせた。通常運転の奈波は元気いっぱい。その元気さはおそらく四天王の中でも最強だろう。ちな最弱は真保一択。
東雲:「ってことは、ナナミン、ヤンキー好きなん?」
鴻池:「なんでや!
白鷺:「いや、港に沈めるってどういうことよ……、せめて海に捨ててやれよ」
東雲:「いや、捨てないで! 止めてよ!」
鴻池:「なんや、真保も昨日の生麦茶事件で帰らぬ人にしたろか?」
白鷺:「なんで生麦茶、じゃない、なんで麦茶かけられて私が死ぬのよ⁉」
東雲:「だめよ、真保は私が殺すんだから!」
白鷺:「殺すなよ! 助けろ!」
そう朝日が腹を抱えて笑っていると呼応するように奈波も笑いだす。「私らホンマ、仲がいいんか分からんわ」と困惑する私。カオスティックな空気の中、「お待たせ」と渚沙が帰ってきた。
東雲:「ママ、助けてよー、真保ちゃんが殺されちゃう」
鴻池:「いや、お前めっちゃくちゃ殺害予告してたろ!」
宮道:「喧嘩しない、喧嘩しない」
さっきから物騒な言葉がひっきりなしに飛んでるけど……。
――やっぱ頼れるのは渚沙ちゃんだ!
宮道:「二人が喧嘩すなら私が真保ちゃんを倒します!」
白鷺:「なんでぇ!!!?」
この渚沙まで加わった悪乗りに3人は笑いあっていた。マジ真面目な優等生・いつもはあんまし笑顔を見せない渚沙もまで笑われると、もうかえって面白くなってきた。すると私は自然と笑顔になっていたのだ。
こうやって笑いあえる時間が、幸せの絶頂期。一度しかない青春。この4人で生きた時間。これが残りたったの1年。長いようで短い時間。晴れた食堂の庭にはクロネコが寝転んでいた……。
我々は猫である。そして私たちは、学校を親とする子猫である。群れて、じゃれあう関係。でも何れ必ず、この4匹は揃わなくなる。それが人生であり、それが一人立ちなのだ。
――一人立ちの時、子猫は何を思うだろうか。
この答えはいつか、涙と共に分かる日が来るかもしれない。
いつかの季節にさよならを……。
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