【さ】【酒】おぼれて・つぶれて・のまれてしまいました

アルコール飲料。人は酒におぼれたり、呑まれたり、つぶれたりする。飲める人間にとっては薬にも百薬の長にもなるが、飲めない人間にとっては「毒」以外の何物でもない。人間関係、仕事、信頼、何もかもをブチ壊してくれる一種の破壊兵器。



ショートショート

 

「王様、世にも珍しい酒をお持ちいたしました」

「ほほう、ワシは酒には目がないからのう。さぞ美味な酒であろうな」

「はい、北の果ての地。洞窟の奥深くに眠る幻の酒にございます」

「そうかそうか、美味であれば褒美を与えよう。それえでは早速飲んでみようかのう……おい、商人!」

「はい、何でございましょう?」

「この樽には水しか入っていないではないか!お前はワシをだましているのか!」

「いえいえ、恐れ多くも王様にそのような嘘偽りを申し上げるなど。滅相もございません」

「では、なぜこの樽には水しか入っていないのか?」

「これは、はるか北の地にあり、妖精の国より湧く幻酒が千年の時をかけ、この世界へと湧いたものでございます」

「それがどうしたというのか?」

「妖精の住まう地は、この世界とは全く異なるもの。我々にとってはただの水でも、妖精たちにとっては良き夢を与えてくれる美味なる酒なのでございます」

「そうか、そうであったか……しかし、ただの水ではなあ」

「このワインの古樽……いえいえ、古の時代に世界随一と謳われた匠の造りし樽から注がれる井戸水……いえいえ、幻酒には妖精の霊力が備わっております。これを一口飲めば病が治り、二口飲めば若返り、三口飲めば寿命が延び、なんと死ぬまで長生きができるのでございます」

「おお、それは真か!そういえば、ほのかにワインのような香りがするのお」

「それはもう、何十年も使われた古樽ですから匂いくらいは……いえいえ、妖精の世界の香りがほのかに残っているのでございましょう」

「よしわかった、褒美を取らせよう」

「ありがとうございます!」

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