【あ】【朝日】飲み明けの朝日は目にしみるぜ

夜明けと共に、東の地平線から差し込む日差し。普段はすっきりとした気持ちで迎えられるが、飲み明けの朝日は特に眩しい。



 ショートショート


「おはよう♡」

「おはよ……ん?誰だ君は?」

(ここはベッドの上?どうして俺は服を着ていないんだ?それに後頭部がズキズキするぞ)

「えっ、私のこと覚えていないんですか?昨晩はあんなに激しかったのに♡」

「さ、昨晩のこと?」

(昨日は居酒屋で酒を飲んで……その後は何も覚えてないぞ……このお嬢さんは誰だ?なんで破れた服を着ているんだ?)

「ひどい、私のことは遊びだったんですか!」

「い、いや……そんなことは……」

「じゃあ、本気だったんですね?」

「い、いや……そんなことは……」

「どっちなんですか!男ならはっきりしてください!」

「う……っ!お、俺も男だ!責任はとる!」

「本当ですなね?」

「ああ、本当だ!」

「本当の本当ですね?」

「男に二言はない!」

「じゃあ、あのカメラに向かって「私がやりました!」って言って欲しいな♡」

「わ、私がやりました!」

「声が小さい!」

「私がやりました!私がやりました!」

「うん、ありがとう♡じゃあ、そういうことでこれを持って!」

(なんだ、これは?布に包まれた……血のついたナイフ!?)

 バ――――――ン!!

「警察だ!動くな!」

「な、なんだ!どういうことだ!」

「刑事さん助けて!」

「お嬢さんこちらへ!なんて卑劣な男だ!こんなか弱い女性に手を出すなんて!」

「ちょっと待て、俺にはさっぱり……」

「あの男が私と主人を誘拐して殺そうとしたんです!」

「なんだって!」

「主人はあの男にナイフで刺されてベッドに下に隠されています!」

「本当だ!確かに男の死体があるぞ!」

「あの男は昨晩路地裏でいきなり襲ってきたんです。命が惜しければ俺の言うとおりにしろと無理やり……」

「なんと卑劣な!」

「そんなバカな!俺は無実だ!」

「あの男は自慢げにカメラに向かって「私がやった!」と叫んでいました」

「本当だ……これは決定的な証拠になるぞ!」

「待ってくれ!これは罠だ!」

「血のついたナイフに、刺殺された男の死体、お嬢さんの証言に、殺害の自白ビデオ……これ以上の証拠がどこにある!」

「そ、そんな……!?」

「刑事さん、早くこの男を逮捕してください!」

「分かりました。お嬢さん心配しないで、この男は我々が責任をもって牢屋にぶち込みます!」

「うううっ、ありがとうございます刑事さん……」

「しかし、ずいぶんと年上な旦那さんですね」

「そ、そうなんです……でも、主人は年の差なんて関係ないっていつも言ってくれて……」

「そうですか。立ち入ったことをお聞きして申し訳ありません」

「いえ、主人は亡くなってしまいましたが、保険金と財産があるので……」

「心配することはないですね。分かりました」

「待ってくれ、俺の話を聞いてくれ!俺はただ居酒屋でお酒を飲んでいただけなんだ!」

「ほほう、飲んだ勢いで殺人と暴行……これは証拠になるぞ!」

「俺はただお酒を飲んでいただけなんだ――!!」

「見苦しいですわよ犯人さん、それと焼酎の飲みすぎには注意しないといけないですね」

「ちょっと待て、なんでお前がそんなこと知っているんだ?もしかして、昨日居酒屋にいたのか?」

「そんなはずないでしょ、あなたが酔いつぶれて公園のベンチで寝ていたなんて私が知るわけないじゃないですか」

「お、お前……!刑事さん!こいつです!こいつが犯人です!俺は騙されたんです!」

「犯人はみんなそう言うんだ」

「お酒には気を付けないといけないですね。犯人さん♡」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る