第3話
もしかしたら、もともと友達が少ない僕は、ずっと1人なのかもしれない。そんな詞の歌を聞きながら今まで、見ないようにしてきたことを、聞いてしまった気がした。聞いた結果、見ないようにしてきた現実を見てしまうことになった。
1人でも悪くはない。でも、一生1人というのは淋しい気がする。もう気軽に結婚を口にできる年齢ではないけど。そういう、優柔不断さや、弱さや、諦めという感情が毎日押し寄せてくる。
友達や歳の近い後輩が結婚をし、子供をつくり、家やマンションを買うことに悩みだす年頃になっても僕は1人だ。
1人が嫌ではないし、人のことを気にせず自由に生きているのが楽しいし、迷惑をかけたくないし、迷惑をかけられたくないという感情がある。では、迷惑とはなんだろう、と自分で自分に問い合わせてみると、答えなんか出ない。人に頼られるのは嫌ではないし、好きな人だったら、協力しようと思う。自分の性格を分析してみても、別に人と一緒に過ごすのが大嫌いではないのだろうと思い始めてくるようになった。
そして、仕事に嫌気が差したとき、また退職を決意した。今の職場には年下の可愛い女の子がいる。いや、後輩のことが可愛いと思っていた。だけど、先輩と後輩の関係だから、付き合うつもりはなかった。正直に言うと、今回もからかわれたりするかもしれないから好意を抱かない努力をしていた。いつも、彼女に触れたいと思っていた。そして、今回は彼女から僕への、先輩後輩関係以上の好意は感じられなかったから、告白はしなかった。
次の職場が決まり、送別会が開かれた。翌日から長い間、有給休暇だ。会社を去った僕に、彼女から最後に会いたい、と連絡が来た。有給休暇が始まって三日後の出来事だった。二人でお酒を飲み、一晩を共にした。一晩を共にしながら、二人が長い間、両想いであったこと、彼女に恋人ができたことを知った。もう、会社を去る僕は、彼女に恋人ができたことを知りながらも、想いを伝えたいと思った。からかわれることがなくなる、とか、そういう思いはなかった。ただただ、彼女を失いたくない、このままずっと二人でいたいと思った。彼女と二人でいたいと思うことを隠すことができなくなった。胸が熱くなるのを感じたし、朝を迎えると彼女と別れなければならない。次に彼女と会うことができても、もう、今の関係ではなくなってしまうと思った。永遠の別れになってしまうような気がした。ベットの中で彼女に告白した。答えは、ノー、だった。彼女は優しい女の子だ。恋人がいるから、恋人を裏切ることはできない。涙を流してくれた。もし、恋人ができる前、三日前だったら、イエス、と答えていたと。頭の中が真っ白になった。悲しくて涙が出そうになったけど、女の子の前だ。表情を変えずに、わかった、と答えた。朝が来て彼女と別れた。
翌日から僕は彼女が二度と僕の前に現れないのではないか、二度と会えないのではないか、今後僕の彼女になることはないのではないか、もう僕のことを好きになることはないのではないか、という感情が頭から離れなくなった。女の子の恋はアップデート方式と聞いたことがある。僕との一夜の記憶も、他の誰かに上書きされ、僕との一夜は、なかったこと、になるのではないか、という感情も離れなくなった。今まで感じたことがないほどの喪失感、孤独感。もう一生1人だ。彼女以上の存在は現れないという思い。悲しくて辛くてたまらない。涙が溢れてくる。たかが泣いたところで、解決はしないけど、涙が出てくる。これが、恋なんだ。これが失恋なんだ。悲しい、辛い、どうしようもない。恋なんてどうでもよかったはずだ。テキトーでよかったはずだ。もしかしたらこういう思いをしたくなかったから恋なんてテキトーでいい、なんて思ってたのかもな。
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