第2話

僕は人の感情を少しだけ感じやすいところがあるのだと思うことがある。相手が、自分を好きでいるのか、嫌いでいるのか、好きではなくなるのか、嫌いではなくなるのか、なんとなく、表情と行動からわかる。もしかしたら誰にでもあるかもしれないけど。


僕が自分から告白するときは、相手が、間違いなく自分のことを好きなとき、にする。だから告白成功率は100%だ。いや、100%になるように行動している。少し自分のタイプだ、で告白する。失敗したくないし、フラレたくないから、自分から告白する時は必ず成功するときにしている。当然、長続きはしない。


社会人になり、違う部署の歳下の女の子から好意を持たれていることに気がついた。僕は社内恋愛をしない。なぜかというと、付き合っているとき、からかわれたりするのが面倒だし、別れたあとの女の子の徒党の組み方が怖い、と思うからだ。どんな事があれ、悪者は男になる(と僕は思っている)。僕に好意を持っている女の子は可愛かった。性格も良かった。ただ、僕は別れたあとの面倒な事が嫌いだし、付き合っている時のからかい、も嫌いなのである。


そのこととは別に、少し前から僕は職場が嫌いになっていた。仕事内容は好きなんだけど、職場の人間関係が嫌になっていた。転職活動もはじめていて、有給休暇を使いながら、職場見学をはじめていた。


次の職場が決まり、退職の相談を上司と始めようと考えていた時に、僕は僕に好意を寄せてくれている女の子に告白した。当然付き合うことになった。付き合う事が決まってから、上司に退職の相談をした。好意を寄せてくれている女の子が、彼女、になったのだが、その彼女に、退職のことを伝えたのは最後の最後だった。退職するつもりなのに付き合うことにした、とか、退職するから付き合うことにした、なんて彼女に勘繰られたら困るからだ。僕はそういう考えなくてもいいことを考えてしまう人間だ。


嘘だ。僕は、別れる事が怖かったのだろう。付き合っているとき、そして別れたあと女の子にちっぽけな、情けない自分がバレるのが怖かったのだろう。いや、そのどちらでもあるし、どちらでもないのかもしれない。モテているという感情がほしいだけなのかもしれない。僕はやはり情けなく、小さな人間だ。当然、退職前に別れた。今までもそうだったが、僕の別れる、というのは連絡が少なくなり、愛情もなくなり、相手が喧嘩をしたいと思う前や別れ話を始める前に自分から別れる。自分が辛くならないように。


でも、別れたら当然辛い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る