第30話 戦闘プリティヴァ

「ネェちょっと!?何でマーオの拙作が出てくるの!?」

「え、何の話だ?あと拙作じゃないぞ。『パチパチ山の蜻蛉とんぼ百足むかで』、面白いじゃないか」

「ア……アリガトウ?……じゃなくて!今マーオがアナタを改造するトキに使った作品が、何でマーオの全身に映像化されているのよ!」


 マーオスライムの全身に子供向け映像作品が流れている。さっきマーオに即興で作ってもらった対プリティヴァ用の物語だ。

 というか、これは仕様ではないのか、となれば。


「はは、言ったぞ。何が起きるか保証できないとな」

「イヤー!!!コンナまともに推敲すいこうもしてない突貫工事の作品ミナイデー!!!」


 沢山の手の中でスライムがぐわんぐわん波打つ。だが魔素の消去スピードは段違いだ。後30秒で終わる!


「少し燃えにくくなった?偉い偉い。じゃあ――『#原初焼べる光の焔硝コード レッド』」


 プリティヴァは私の姿が変わろうとお構いなし、頭目掛けて猛炎が飛んできた。でもこの身体であれば、

 その『#原初焼べる光の焔硝コード レッド』にヤリナオシ!

『ヤリナオシ:OK』


「―― ――?」

「よしよし!これなら……!」

「……ふむ。『#原初焼べる光の焔硝コード レッド』発動出来なかったみたいだ。貴君のコードによる影響?うーんじゃあ――」


 む――プリティヴァちゃんは何故無言で上を見上げ始めたのか。怖い。


「なあ先生。今プリティヴァちゃんは何をしているんだと思う?」

「シラナイわよ。でも、今アナタの身体は耐火性が上がっているはず。コレグライの火なら燃えない――燃えてるワネ!?」

「何ですって……!?」


 何!?今プリティヴァちゃんは何をした!?『#原初焼べる光の焔硝コード レッド』使ったか!?でも炎は追加されてないぞ!?

 ど、どうする。目ではプリティヴァちゃんが見えていたけど、どれをヤリナオシ指定すればいいのかな?

 とりあえず燃えている自分の身体にヤリナオシを使用!

『ヤリナオシ:OK』


「あれ、火が消えちゃったか。出力上げてみたんだけど」

「え、今、すでにこの場に出てる炎の出力だけ上げたのか!?無詠唱で!?」 

「まあね、でも、貴君には有効じゃなかったみたいだけど」

「プリティヴァ!そんなことし続けてみろ、先に洞窟が融解して崩壊するぞ!君も危ないだろ!?」

「じゃあその前に大人しく討伐される気があるかな?」

「……お断りする!」


 まだ、マーオの夢を叶えるまでは倒れるわけにはいかない。でも何をしたかはわかったぞ。

 炎に対してヤリナオシ!火力が上がる前の段階に!

『ヤリナオシ:OK』


「……あれ、火の勢いが弱く――違うね。やっぱり、戻されてる?」

「続けて『#    コード ヌル』!頼む!」


 トドメだ。魔素消去を3割、残りの7割の手で火と熱に『#    コード ヌル』。

 この身体が届く範囲だけでもマーオへのダメージを軽減。あわよくばプリティヴァに、おタッチしておしまいにしたいが――!


「貴君のコードの効果は何なのか……うん?今度は急激に辺りの火と熱が消えていく……?」

「今のうちに謝っておくぞ、君を倒す!慰謝料に期待していて欲しい!」

「……そっか。なら――――」


 プリティヴァは無言で上を向きながら再び何かの詠唱を始めてる。よし、事象の発生直後にヤリナオシで――


「――――――――!!!」




 思考がまとまる前に、一瞬で世界が真っ白になった。

 遅れて響くはとどろきのような破裂音。


 四散する腕、目、腕、目。私だったモノが千切れて濃霧の世界に呑まれてしまう。

 ただ、やはり女神のパーツの力は凄まじい。これくらいではまるで死なない、意識も落ちない。




「ゲホッ、ゲホッ。今、何が――。ヤリナオシ……何に?いやそれより先生!ゲホッ……大丈夫か!?」


 視界は一面の白。これは――水蒸気?


「先生……先生は……あ、この手の所にドロリとした感触が。って先生!動けますか先生!」


 魔素が消え切ってる、生きてはいそう。じゃあヤリナオシはせず、このまま予定通り――


「っっっ!ぐっ!?」

「そんなに沢山目と手がついていても、こうやってしまえばどうということない、ね!」


 顔の上半分を矢のような火球に消し飛ばされた。幸い口は残っているが――

 ……こうやってしまえばって、何も見えなくすればそりゃねぇ!プリティヴァは何処に――


「……あはははは!

 全力の『#原初焼べる光の焔硝コード レッド』に水をかけると、こう……なるんだね!でも、死んでくれなかったか!はは……他の竜族に……次のおのれに。共有出来てよかったかな……!」


 ――嘘だろ、自分で自分の能力コードに水かけて水蒸気爆発させたのか!?

 何もないところからどうやって――転移系の貼付能力ペーストコードでも使ったか!?

 プリティヴァは爆破の衝撃で全身から血を流している。

 からから笑いながら、今にも千切れそうな翼を揺らしてそこに立っている……!


「自爆特攻反対!いくら記憶が共有出来るからって、君ほどの竜が自滅でおしまいだなんて……!」

「おしまい?あはは、この個体が失われること?終われないよ。おのれらの魂は転生する。転生した魂は記憶を共有してまたおのれになる。だからね、こんなのは、古い肉体を、捨てるだけだ!」


 ああもう!擬似異世界復活コンティニュー出来る竜族は死が安い!

 

「言い方を変える。そういうのはプリティーじゃない!やめてくれ!」

「まあ、廃棄寸前のおのれの身体はプリティーではないだろうけど」

「自分を卑下しないで欲しい!プリティーが泣いてしまうぞ!」


 プリティヴァと話しながらマーオの小さな声に耳を傾ける。なになに。「いくら速筆でもこの短時間に二本は無理。進捗ダメです」……それもそうか。


「……仕方あるまい。プリティーが足りない君を叱責するために。ありのままの私でここに宣言するとしよう」

「まだ、何か、面白いことをしてくれるつもり?記憶に残したいから、早くしてくれると――」


 言われずとも、言ってやるとも君が為。


「宣誓!私は、!ノットプリティーは根絶するコトをここに誓う!」


 海馬の底へ刻みたまへ。

 新なる魔王の誕生を。

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