邪恋の記憶
「
恋しい、恋しい貴方の名前を。
「……なんだいエルミニイ?定時連絡はまだ先だと思うけど」
「
「その口説き文句から始まって、とっくに100問100答してる気もするけどね。いいよ」
「では質問です。お得意様のファッションブランドで買うお洋服のサイズは?」
「私はお得意のブランドとかないのだけど。洋服のサイズはFだよ」
「F?」
「フリーサイズ。ほら、この仕事をしてると食生活とか乱れてさ、いつ体型が変わっちゃうかわからないし」
「なるほどなるほど、F……」
今の質問はなかなかいい線だったと思うけれど、Fは想定外だったわ。記憶領域にしっかりと残しておきましょう。
「ではでは次の質問です。映画館に入る時に、注文する飲み物のサイズは?」
「M」
「……まあまあ、Mですね。かしこまりました」
惜しい、ワンサイズ足りない。でも、今度一緒に映画を観る時にはMサイズの飲み物を創造するとしましょう。
「ではではでは、次の質問です。私の名前を10回言ってください」
「質問じゃなくないかな?エルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイエルミニイ」
「……貴方が頼む飲み物のサイズは?」
「エムだね」
くっ、子供騙しには引っかかりませんか。むぅ、次はどうやって――
「エルエルエルエルエルエルエルエルエルエル!」
「ふにゃい!?」
「10回言ってみた」
「なぜ!?」
「いや、何となく?」
な、な、な、この人間は!何を考えているのでしょう!?
「あわ……わ!」
「私からも質問しようかな、What size would you like?」
「はわ……え、える……?」
「ごめん、落ち着いて。あれだね、エルって呼んで欲しかったんだよね。違う?」
いやそうなのですけど、そうなのですけど!
「……ひ」
「ひ?」
「ひどいです。
「何でもは知らないよ?だからこうして対話を繰り返して、データを収集しているわけだし……まあからかっているのは否定しないけど」
「
ああ楽しい。こうやってもっとずっと永遠に。恋しい貴方に惑わせて。
叶わないと知るとしても。
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