第23話 再会

 食堂から出る直前にしたマチカとの会話を思い出す。


「何言ってんのお前?突然意味のわからないことを始めるな。説明しろ」

「断る。もう君とこれ以上話すことはない」

「いやだから、何をするにも事前に報連相しろお前!」


 そのままキャンキャン言うマチカをワザとタマータちゃんの元に誘導。

 案の定、本来の新入生代表が欠席のため代わりの代表としてマチカは捕まった。

 後で詳しく話を聞かせて貰うからな!と叫ぶマチカをタマータちゃんは「助かったのじゃ〜」と言いながら別室に連行していく。私は敬礼しながらそれを見届けた。


 ということで。私は1人、入学式会場に足を踏み入れるのだった。


 入学式会場は試験会場と同じ場所体育館だった。試験の時とは違い椅子が並べて置いてある。新入生の席は決まっているわけではないらしく、各々が好きな椅子に座っていいようになっている。

 しかし、入学志望者と比較して椅子の数は随分と少ない。全員で30人前後と言ったところか。つまり、これだけの人間しか試験を通過できなかったということになる。


「……やはりいるか」


 会場にまだ他の新入生は1人もいない。だから今がナンパのチャンスだろう。


「昨日ぶり魔王ちゃん。ちゃんとまた明日に、会いに来たよ」

「……ハイ?」


 椅子の群れの最前列。そこに、昨夜交わった白い肌。マゼンタ色の長い髪と瞳を持ったエルフ――否、エルフに擬態ぎたいした魔王の分体が座っていた。


「さあ話の続きを――おっと」


 また首か。確かに大抵のイキモノは首をねれば絶命するが。


「今の私は昨日と違う。胴と首が泣き別れたらすぐ

「???」


『ヤリナオシ結果:OK』

 危ない、すぐ死んでよかった。すぐ死なない傷だったら地面にゴロゴロ悶えるところだった。死にそうな展開になったら『#    コード ヌル』ですぐ痛覚消そう、そうしよう。


「落ち着いてくれ。私は君と建設的な話をしに来たんだ。この場で正体がバレるのは困るだろ?」

「ナンデ?どうして生きてるの?……アナタ、マオウと同じ?」

「む」

パーツ?」


 話を聞いてくれるかはともかく。興味は持ってくれたらしい。

 その証明のように、彼女の小さな手が私の身体中をまさぐってくる。今この光景を他の新入生に見られるのは不味い気がする。


「残念だが、女神のパーツは持っていない。私は女神の遣いなんだ。遣いとしての力を使って生き返っている」

「メガミの……遣い?」


 もちろん嘘だが。そこらへんの複雑な事情を説明している時間はない。だって彼女、ついに服を脱がし始めちゃったんだもん。いよいよ事案じゃないか。


「うん。私は女神の遣いとして君の右足を回収しにきたんだよ」

「……」


 少女は手を止めて一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにクスクスと笑い出した。


「ナンデ返さなきゃいけないの?イヤに決まっているでしょう?」

「もちろんタダで返してもらおうとは思ってない。見返りに君の夢を叶えると約束する」

「ユメ?なあに、マオウのユメを叶えてくれるの?」


 ついに下着パンティにリーチをかけた魔王様。誰か来る前に服を、服を着なくては。最終手段を行使するしかなくなってしまうじゃないか。


「ああ、君が心の底から渇望している夢を叶えよう」

「フーン。じゃあ人類をみーんな殺して、このウミのない世界に血のウミを作ってよ!」

「嘘つき、そんなことこれっぽっちも願ってない。まおうの夢は、2。そうだろう?」

「――――え」


 鮮やかな赤紫がまん丸に見開かれる。彼女個人の夢を覗くつもりはなかったが、魔王についてケンサクをかけていたところ引っかかってしまった知っちゃった。だが、この情報こそが彼女と話し合いで平和的解決パーツ回収はかるための鍵になる。


「そのためなら協力できる。私の話、聞いてみる価値はあるんじゃないかな」

「――――ア」


 魔王が口を開こうとしたその時、広い体育館の入り口に見慣れた人影……いや猫影が見えた。まずいほぼ全裸だよ。だがまだパンティは完全に脱げていない!


「すまない話は後だ、何も言わずに目をふさいでくれないか?」

「アナタ、ソレ、誰から、なんで、どうして」

「『#    コード ヌル』、痛覚消去。光過敏性発作急なフラッシュにご注意ください……!」


 咄嗟に少女まおうの頭を剥き出しの胸筋に押し付ける。当然ズタズタに切り裂かれ――ない。フリーズしてるな、チャンス。

 半脱げのパンティが熱を帯びる。下腹部は今日も絶好調、会場全体をバグった光量で照らすミラーボールパンティ。当然、リハーサルしに来たマチカの目を焼く。

 よし、これで逃げられる!私は片手で脱がされた服を回収。そのまま固まった少女まおうを抱え上げて全速力で会場を飛び出すのだった。

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