第21話 おはようマチカ
アルコバレル学園学生寮、自室のベッドで私は目を醒ました。
「夢を見た気がするな。いや、
魔王に出会って
親子のようで、あんなに楽しそうに見えたのに。告白の返答一つで人生どう転ぶかわからないモノだな
その魂が、この世界のどこかに転生しているのならば。女神をどんな風にフッたのか是非聞かせて欲しいものだ。
ケンサクしてもわからなかった
部屋の扉から猫耳がひょっこりと片方だけ顔を出す。
「おはよう。仕事の時間だ、目覚めはどうだ?」
「おはようマチカ。昨日私と電話を切った後1時間くらい
「なんで知ってんだよ!?そんなの見るために
「いや、今のは冗談というか当てずっぽうだったが。そうだったのかマチカ。悪いなマチカ」
「しゃー!!!」
朝から元気にマチカが鳴く。さて、今日はアルコバレル学園の入学式、私の初出勤の日だが。
「着替えを持ってきてくれたのかマチカ。衣食住完備で福利厚生が手厚い、最高の職場だなマチカ先輩。ありがとうマチカ先パイパイ」
「朝からマチカマチカうるさい!早く着替えろ!」
「ああ、早速着替えるとしよう。着替えるには脱がなくてはならない。脱ぐためには人目が必要だ。ではいざ!外に」
「させるかばーか!着替えたら声かけろ。僕は部屋の外に出るから」
なんで扉を半開きで挨拶してるのかと思ったらそういうことか。
「照れなくていいのに。私は見られても気にしないぞ」
「お前は少し人の気持ちを考えたらどうなんだ?朝から問題発言かますセクハラ部下のために服を用意する僕の気持ちにもなれよ」
「む、確かに。人の気持ちは難しいからな。婚活をスムーズに進めるためにも、気をつけるように善処……マチカちょっと」
「何?」
床に置かれた服を広げて確認する。昨日マチカに着せられた服はどこでも買えるようなシンプルな白シャツとズボンだった。だが今日はどうだ。
「何故全体に洗濯機が舞ってるんだこのシャツ」
「さあ?コラトル先生……僕の主治医がいつも着てる服の一つ。病院に常備してあるから朝の検診ついでにかっぱらってきた」
「警部が盗みを働いていいのか?いやそれより。なんとも個性的というか、ユニークというか……」
「学園は私服OKなんだからそれくらい派手でも問題無いでしょ。文句ある?」
私は衣服にこだわりなんてない、着られればそれで良い。なんなら着る必要もないのだが。そういうことを聞きたいのではなく。
「いや、文句はない。むしろ目立ってモテて入学1日目でハーレムを形成してしまうんじゃないかと心配になるほど素敵だ」
「大それた
「時にマチカ、君の主治医は良い人間なのか?」
「ん?コラトル先生?まあ、小さい時からお世話になってるしね。人間にしてはイイやつじゃないかと思うけど」
「そうか、是非紹介して欲しいものだ。良き友人になれる気がする」
洗濯機柄のシャツに腕を通す。肌触りがよく、動きやすい。かなり品質の良いものみたいだ。いつかコラトル先生に会う時はとっておきのパンティを用意して対戦を申し込もう。
「着替えたぞマチカ。入学式まで時間があるが、どうする」
「朝ごはんを食べに行く。腹が減っては何とやらってね」
「先輩の奢りか。ありがたくいただきます!」
「昨日は先輩として奢ってやったけど、今後はお前がクエストで稼いだ報奨金から払ってもらうからよろしく」
「しょんなぁ。あ、外に出る前に少し待って欲しい」
マチカに返すものがあったんだ。クローバーがワンポイントついた可愛いやつ。忘れないうちに。
「マチカ、私が昨日スネに巻いたままだったハンカチだ。返して欲しがっていただろう?今こそ返そう」
「……いや、あげる。持ってていいよ」
「む、確かに風呂で一度ビチャビチャになったし、蜘蛛やらゴブリンやらと
「なんか、お前が昨日一日中身につけていたのか……って思うと別にいらないかなって」
なんだ、そういうことなら。私はこれみよがしにクローバーのワンポイントが見えるようにして、胸ポケットにハンカチをしまうのだった。
「まあそんなことより食堂だ。混む前に行くぞ」
「そうだな。私も私自身の機能について君に説明したいことがある。食事を取りながらの方が気楽に話せて良い。是非そうしよう」
「昨日話してたヤツか、わかった。食べながら聞かせてくれ」
朝の短い挨拶を終えた私達はアルコバレル学園備え付けの食堂へ向かった。
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