第6話 ギルド・アノニム
学園内部を通り抜け、ギルド・アノニムに到着した。
ギルド・アノニムはルミエーラ王国の3大主要施設が一つ。国内唯一の冒険者ギルドらしい。
どうやら普段から冒険者で賑わっている施設のようだが、今日に限りというか案の定というか。ギルドの受付には人が溢れていた。
「お前はじっとしていろよ。いいか、間違ってもその
「大丈夫だ。こんな障害があっても運命というものは揺らがない。五感を研ぎ澄ませれば……スーーーッ(鼻で息を吸う音)」
「顔全体に窒息する程布を巻いてやろうかお前???」
マチカは私の服を乱暴に引っ張り受付に足を運ぼうとする。
だが、先程移動中に得たケンサク結果によれば、この場でわざわざ列に並んで依頼を受ける必要はない。
「待つがいいマチカ、ぷりぷりぷりてぃーぬマチカよ」
「煽ってるのか?本当に息の根止められたいか?何」
「並ばなくていい。5秒後に紫ショートヘアのよく似合う少女が依頼を持って私に飛び込んでくるからな」
「はあ?それどういう――」
どんっ!と私の背中から軽い衝撃が伝わる。
「はあい!そこの目隠しお兄さんと……貴女警部さん!?うそ〜警部さんも受験とかするんだ!?へぇ〜お忙しいのに大変!あ、もしかしてお二人で今からコレ並ぶワケなんです?」
情報通り、そのパンツ丸出し――否、ふんどし丸出しエルフ耳受付嬢が私に突撃、そのまま上目遣いでそう言った。
この
「そうだね、並ぶ予定だよ。貢献値を一刻も早く稼ぐためにも、まずはクエストを受けないといけないからね」
「キモっ何いきなり好青年ぶってんのお前」
「ふ〜んそうなんだ〜時間がないのにもったいないですね〜
ところでー、あたしすごーい貢献値稼げるクエスト抱えてるんですけどー。紹介して欲しかったり、しちゃいます?」
その受付嬢は私から視線を移し、悪巧み顔を隠すことなくマチカにずいっと近寄る。
「いや、
「うにゃー、そんな怪しまなくてもいいじゃないですかー。あたしはただの受付嬢。冒険者様のためにクエストを紹介するのがお仕事ですからねー、おかしな事はなーんにも言ってないと思いますよー?まあまあ、とりあえず目を通してみて下さいよー、
はいコレとコレとコレ、あたしちょっと凄いんですよー?」
その受付嬢は、まるでピエロがジャグリングをするように、ぽいぽいぽいっと丸まったクエスト依頼書を3枚こちらに投げた。
――反射的に全てキャッチしてしまった。
「お前さっきから気づいていたが、目ぇ見えてるだろう!?目隠し意味ないじゃないか!返せ僕のハンカチ!」
「見えてはいない。というかスネを蹴らないでくれよ。大切な婿入り前の
「お前はもう結婚しているだろうが!」
やいのやいの言われつつ、依頼書をマチカにも見えるように1枚ずつ開いていく。内容は――
――――――――――――――――――――
-終末処理場のゴブリン退治-
依頼内容:ルミエーラ終末処理場のゴブリン退治
集合場所:ルミエーラ終末処理場
募集人数:1〜4人
レベル:B
貢献値:80
依頼者:ルミエーラ終末処理場最終沈殿池の現場監督
依頼者コメント:
最近ルミエーラ終末処理場の最終沈殿池にちょくちょくゴブリンの群れが侵入している。何が目的なのかわからないが、あいつらがいると怖くて点検できないし、勝手に機器に触られたりしたら堪らない。
という訳でゴブリンの群れを退治してほしい。
詳細はルミエーラ終末処理場でまた説明する。よろしく頼んだ。
――――――――――――――――――――
-スラゼリーくださーい!-
依頼内容:スラゼリー×100の納品
実施場所:スライムダンジョン
募集人数:3人
レベル:C
貢献値:50
依頼者:匿名希望の受付嬢L
依頼者コメント:
セレニテ・ルマエでは空前のスライム風呂ブーム!おかげでスライム風呂とか他にも色々便利なスラゼリーが日夜不足状態でーす!
という訳でパパパッとスラゼリー集めてきてくださーい!集めて来てくださった数に応じてボーナスに色付けしちゃうぞー☆
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-簡単な薬草採集、調理-
依頼内容:ヨモギの採集、及び調理
集合場所:ミネル村
募集人数:3〜6人
レベル:D
貢献値:10
依頼者:ミネル村老人会代表
依頼者コメント:
老人会でヨモギ餅が食べたいのじゃ……
しかし妻は面倒だと作ってくれんし、娘も作り方知らんわ無理、と冷たくてのう……
どなたか優しい冒険者様、ヨモギの採集から餅の調理までを行ってくれんかのう?
50人前ほど作ってくださると助かりますぞ。
――――――――――――――――――――
「どーよお二人さん?ライアちゃんに言うことあるんじゃない?」
「これは――見事に人気クエストばかり。いったいどんなカラクリで――」
ざっと
『ケンサク結果 OK』
よし、受けるクエストは決まった。一択になってしまった。それはそれとして。
「特別なコードがいらないうえ
「どうしたどうした、突然マジメになって。発作か?落ち着け黙れ呼吸を止めろ二度と二酸化炭素を排出するなよ。……で、何企んでるんだ君。こんなのチラつかせて僕に何をふっかけようっていうんだ。信用ならないな」
「やだ怖いー、だから何も企んでませんよー。というか、あたしはどちらかというと、そっちのお兄さんに聞いてるんだけどなー」
「ふむ、あと5年経ってからそのプロポーズは受け付けよう」
「あはは、娘でもない年下の女の子に既婚男性が言う言葉としてそれどうなのかなー?で、お兄さんはコレ、受けてくれるの?」
ライアが笑顔で依頼書のサイン欄をトントンとつつく。
我々がここに
「マチカ、時間がないのは山々だが。一つ質問しても良いか?」
「死に方は選びたいって?」
「それもそうだが、君は警部……おそらく国の秩序の維持とかに関わる者として。やっぱり悪は許せないとか、そういう
「少なくとも、その行いで不条理を
「じゃあライアちゃん、悪いな。そういうことだから、契約書を見せて貰おうか」
私はライアのトリックの仕組みを
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