第3話 パンティの導き

 私は再び目を覚ます、目覚めたそこは――天空であった。

 凄い速度で自由落下してるようだ。普通に落下死おっこちぬが。


「ぶゅるぶゅるぶゅる」


 顔面が風圧でぶゅるぶゅるしてしまっている。とりあえず環境が変わっている(現在進行形で)。ここはどこなのか、この世界を――ケンサクする。


「うゅるうゅるうゅる」


『ケンサク結果:OK』

 現在私が落下しようとしているのは、ルミエーラ王国。

 この剣と魔法の世界に数多存在する国の中でも規模、文明水準ともに最大最高の城郭じょうかく都市。

 現君主はアミュレッタ・ブラン・ルミエーラが納めし、清らなるルミエーラ。美しき水の都。


「りゅりゅりゅりゅりゅ」


 さて、どこに落ちたものか。というか落ちたところに人がいたらどうする。ソレも含めてケンサクケンサク。


「み。」


『ケンサク結果:OK』

 よし、あそこだ。あの城、複合城砦ふくごうじょうさいルミエーラ。学園と冒険者ギルドと宮殿と公衆浴場が同じ敷地内にあるファンタジー詰め合わせキャッスル。あそこに落ちよう。

 そしてマストダイの運命を覆すには――なるほど?女神にもらった能力コードとやらを使う必要があるのか。……これなんだ?

『ケンサク結果:NG』


 ぶぇぇいわからぬ、墜落まで後5秒。やらぬ後悔よりやる後悔。よし。


「――『#    コード ヌル』!」


 大きく息を吸って、能力コードを発動する。

 手の中に生まれる『何か』、ソレが作用したのかは不明だが。私の肉体はあわや地面とキッスする直前にフワリと浮く。

 そしてしばし無重力状態を堪能した後に、ゆっくりと地に足を付けさせた。


「……?私の手に『』が生まれ、消えた――ようだ。何かやっちゃったのか私は。何なんだよう。

 で、最終的に降り立ったここはどこだ?……ケンサク」


 私の周りを取り囲む人、人、人。完全に包囲されてしまった。

 

『ケンサク結果:OK』

「複合城砦ルミエーラ内部の主要機関の一つ。アルコバレル学園。

 アミュレッタと、竜族の長である

緋き消却のプリティヴァースキ現アルコバレル学園長』によって設立された対魔王用人材集中育成機関……か」

「なんだこの変態!?いきなり学園概要をそらんじ始めたぞ!?」

「俺は言ったぞ……こいつは一夜漬けで気が触れたタイプの入学志望者なんじゃないかってな!やっぱりな!」

「いやでもいくら緊張してるっても空からパンイチで試験会場に突っ込んでくるのはクレバーすぎねぇか?」


 どよめく群衆。なるほど、今日はこのアルコバレル学園の入学試験日のようだ。そして私はこの会場に天空から入場エントリーしたらしい。


「なにぶん大型新人なものでな、面接は第一印象が重要だと聞いた。これは合格だろう。新入生代表の挨拶は必要か?」

「「「ガンギマリかコイツ!?」」」


 軽いジョークを交えながら親しみを込めて挨拶をしたつもりだったが、なんだかよりいぶかしげな目で見られている。

 さて、どうしたものかと歩き出そうとしたその時。


「突如地上に無差別侵攻を開始してきた魔王軍に対抗するため人類と竜族が協定を組み、生み出された未来ある闘士達の学び舎、女神に選ばれたものしか立ち入れない聖域。我がアルコバレル学園の学園概要は、そのように続いていますの」


 道が開ける。否、人々が道を作る。その中から現れるはまばゆいばかりの一等星。

 それは、私の眼前で立ち止まり一言。


「貴方は女神に選ばれたと。私、ルミエーラ王国第二王女アイソレ・ブラン・ルミエーラに誓って言えますの?」


 星々を束ねたがごとき純銀に輝く髪に、瑠璃色の瞳をした少女がこちらを覗き込み、そう言った。


「……」

「あのぅ。聞こえておりますの?もしもし?」

「Oまかwa首傾げくそ可愛かよちょっと怒ってるね愛い愛いface近い近いねいい匂いknknこの出会いに感謝卍卍卍 The world is beautiful

 ふぅ、落ち着こう落ち着いた」

「……ええと、よくわかりませんが、落ち着いたならよかったですの。それで貴方は――」


 眼前の少女に片膝のまま左手を差し出す。

そう、このポーズが重要なのだ。そして自己PRは堂々と、自信を持って雄弁に。


「第一印象が重要なのは面接だけではなかったな。むしろ面接などというイベントは、この瞬間のための予行演習に過ぎないだろう」

「……何をおっしゃりたいんですの?」


 下腹部のテンションが最高潮に達する時、私は溢れんばかりに発光する。


「ズキュン。なんてことだ、私のパンティは極彩色に輝いてしまったようだ。麗しき星の君、私と結婚マリッジしてくれないか?」


 その瞬間、私の一張羅パンティは鮮やかに100000lxたいようけんしたのだった。


「きゃああああ!?」

「ギャー目があぁァァァアイソレ様!?」

「何だコイツ何だコイツ!!!誰かソイツ捕まえろ!アイソレ様に近づけるな!」

「新手の変態だぁー!!!であえーーー!!!」


 現場は阿鼻叫喚。こういうのをフラッシュモブというのだったか、実際輝いているわけだし。


「目を覆ってしゃがみ込むほど感動させてしまうとは。パンティに感謝だな。とはいえちょっと光量を誤った自覚はある。せめて新郎新婦入場のスポットライトくらいに抑えて」

「――そこ!『#輝き煌めく命の躍動コード チョコレート』!」


 ガツンと頭に鋭い衝撃が走り、私の肉体は地に叩きつけられる。

 い、痛い。これが痛みか。実に不快だ。そしてこれはそう、アレだな。――多分誰かに殴られた。


「暴力反対!君は――」

「よし捕まえた!……ちっ。しかしまさか予言なんてものが本当に当たるなんて……」


 私の腕を捻りあげる人物に目線をやる。そこには小柄な猫耳少女が1人。その金の髪の隙間から一瞬隠れたほうの瞳が見える。

 ――色が違う、見えているほうは髪と同じ眩い金色だが、隠れているほうはエメラルドのような緑色をしている。


「そこのオッドアイメカクレツインテール!痛い痛い!優しくしてくれ!」

「大人しくしろ。8時2分、ルミエーラ王国第二王女アイソレ・ブラン・ルミエーラへの強制わいせつ罪でお前を逮捕する!」


 こうして私は転生早々逮捕されたのだった。




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