【書籍化】【コミカライズ】断罪された悪役令嬢ですが、パンを焼いたら聖女にジョブチェンジしました!?

７－８

　メロンそのものと同じ――いいえ、なんならそれ以上にメロンの甘みや芳香を存分に楽しめる！　まさしくプレミアムなメロンパン！

　だから、私史上最高のメロンであり、メロンパンなの！

「ああ、また食べたいなぁ……」

　ここでそれを食べようと思ったら自分で作るしかないんだけど、そもそも美味しいメロンが手に入らないからなぁ……。ううっ……。食べられないとなると、余計に食べたくなる……！

「メロンを楽しめるメロンパンもいいけれど、普通のメロンパンも美味しいよね」

　メロンパンは、日本発祥の菓子パンと言われている。

　たしか、神戸のパン屋さん『金生堂(きんしょうどう)』が発売した、表面がひび割れていて格子状の模様がついた丸いパンが、日本で最初のメロンパンだって説が有力みたい。

　でも、それが全国に広まったというわけではないみたい。

　なぜなら、メロンパンって地域によってさまざまあるのよ。知ってた？

　メロンパンと言えば、丸いドーム型で格子状の模様がついているものを想像する人が多いと思うけれど、京都、滋賀、兵庫、広島、高知、大阪など西日本の一部では、洋食店でライスの形を作る食型で成形したラグビーボール形のメロンパンが存在しているの。

　それは、丸いドーム型のメロンパンと同じく、上にビスケット生地を被せているものもあれば、ビスケット生地を使用していないものもあるけれど、中になにかを入れていることが多いみたい。たとえば、京都や神戸ではマーガリンを加えた白餡とか。広島ではカスタードクリームとか。

　ほかにも、メロンパンはいろいろなものがある。パンの表面に溶かしバターを塗って焼き上げて、カスタードクリームをたっぷりと詰めた丸型のものだったり、同じく丸型でクッキー生地は使わず、中にたっぷりのクリームチーズが入っているものだったり。

　あ！　ちなみに、メロンパンの発祥とされている『金生堂』が、ドーム型のメロンパンを『サンライズ』と命名して販売したことから、西日本の一部ではそれを『サンライズ』と呼び、ラグビーボール型のほうを『メロンパン』と呼んで区別していたりするみたいよ。

　私のイメージする『メロンパン』は、ドーム型のヤツ。

　ああ！　カリッ、サクッ、ホロッとした、バターのきいた甘ぁ～いクッキー生地に、ふわふわの柔らかいパン！　いいよねぇっ！

　クッキー生地に食感のある粒砂糖が使われていたり、チョコチップが混ぜ込まれていたりしても最高！　もともとがシンプルな味だから、メープルメロンパンとか、ストロベリーメロンパンとか、抹茶メロンパンなんてものもあったりして、冷静に考えるとなかなかカオスな商品も多いけれど、とにかく確実に一つ言えることは、日本発祥の菓子パン――メロンパンは美味しい！

　ああ、いいなぁ～！　作りたいっ！　今すぐ帰って、メロンパンを作りたいっ！

　どんなメロンパンにしよう？

　チョコチップメロンパンはマスト――と言いたいところだけど、まだ固形のチョコレートはないんだよねぇ。

　あ、そういえば、出来たてのメロンパンにアイスクリームを挟むスイーツがあったっけ。

　アイスクリームは贅沢にしても、メロンパンに生クリームをたっぷり挟むのも美味しいよね～。完全にカロリーの暴力だけど、オンディーヌは好きそう。

　わくわくしながら、メロンパンに思いを馳せていた――そのときだった。

「アヴァリティア」

　背後から、できれば聞きたくなかった声がする。

　私はビクッと身を弾かせて、出入り口の方を振り返った。

「王太子……殿下……」

「こんなところにいたのか」

　王太子殿下が、ツカツカと無遠慮に近づいてくる。

　私はさらに身を震わせ、じりっと後ずさった。

「なにかご用でしょうか？」

　その警戒心たっぷりの行動が気に入らなかったのか、王太子殿下がムッとした様子で眉を寄せる。

「聖女だともてはやされて、いい気になっているようだな」

「そ、そんなことは……」

「あるだろうよ。王太子に対しての敬意が感じられない。まずは頭を下げるべきだろう」

「っ……」

　それはそのとおりだ。動揺して、失敗した。

　私はすかさず「申し訳ありません」と謝罪し、丁寧にカーテシーをした。