6-13
受け取った瞬間、満面の笑みを浮かべて、仲間のところにすっ飛んで行く。
「おおおっ!? なんだこれ! めちゃくちゃうまい!」
「な? な? 最高だろ!?」
そして一口食べて、驚愕の声を上げて――仲間たちと本当に幸せそうに笑い合う。
ああ、いい光景だなぁ……。最高。
「ティア、ホットドッグのほうは終了です。腸詰めがなくなりました」
手伝ってくれていたアレンさんが叫ぶ。
ハンバーガーは調理工程の関係で、調理担当の神官さんたちやアレンさん、私やお兄さまの分もここにあるけれど、腸詰めは作業員の人数+うちのにゃんこたち分しかボイルしてないから……。
目の前に並んでいる人数は四人。あと四個作ったらこちらも終わりってことね。
めちゃくちゃ忙しかったけど、楽しかったーっ!
いやぁ、こんなに喜んでもらえると、ハンバーガーショップもやりたくなっちゃうよね。
まずは私のパンをこの国に浸透させないことにはできないけどね。
「こっちの細長いほうも最高にうまいぞ! 腸詰めをこんなふうに食べるなんて!」
「こっちもいろんな味がしてうまいなぁ! マスタードがまたいい仕事してる!」
「それよりじゃがいもだろ! なんだこれ!? カリカリほくほく!」
「こっちは塩といもの味しかしねぇのに、なんでこんなにうまいんだ!?」
ねー、それ不思議だよね。フライドポテトってなんであんなにやみつきになるんだろう?
挽肉もじゃがいもも、そのほかの野菜類も、昨日の昼食と同じもの。腸詰めも神殿側に用意してもらったから、別段高級なものではない。民が買える値段のもの。
油だけは高価なものだから、普段こんなにたっぷり使えることはないだろうけれど、でも違いはそれだけだと説明すると、みながどよめく。
「えっ!? じゃあ、この不思議パンを手に入れられさえすれば、この味が家でも食べられるってことか? まさか!」
「嘘だろ!?」
おっと? 不思議パンときたか。まぁ、パンといえばあの罰ゲームパンって認識の人からすると、たしかにこのパンは不思議だよね。
「だけど、肉が高級じゃなくてもいいなら、あとはトマトにオニオン、ピクルス……たしかに全部家にあるんだよなぁ……」
「うちもだよ……。信じられねぇ、本当なのか……?」
本当なんだよねぇ、これがまた。
「でも、不思議パンを手に入れることが、とんでもなく難易度が高いってことだろ?」
「まぁ、そういうことだろうな。見つけるのも難しけりゃ、購入するのはもっと難しいだろうな。絶対に目玉が飛び出るほど高いぜ、このパン」
「俺もそう思う。こんなに美味しいもんなぁ」
ラスト四個を仕上げて、待っていてくれた人たちに渡していると、そんな声が聞こえてくる。
あ、そっか。そう考えちゃうよね。でも、そうじゃないんだよ。
誤解を解こうとしたそのとき、ハンバーガーを食べ終えたシルフィードがひどく興奮した様子で叫んだ。
「ティア! このハンバーガーってやつ、最高においしかった!」
ハンバーガーとホットドッグは、もちろんにゃんこたちにも大好評。とくに彼、シルフィード。今までも甘いパンよりカレーパンを好んでたから、そうだろうなとは思っていたけれど。
「絶対に店でも出すべきだよ! 人気になるよ! 間違いない!」
「うーん……。まったく同じものは難しいかなぁ……」
「えーっ? なんでさ!」
「だって現状、パンは私一人で焼いてるからね。調理補助で少しだけ手伝ってもらってるけれど。オープン時間までにもくもくと焼いて、ひたすら焼いて、そうしてためたストックを売ってるの。それがどういうことかわかる?」
その言葉に、シルフィードが目を見開く。
「あ……」
「そう。つまり作り置きってこと。だから作っても、熱々の間に食べてもらえないのよ。冷めても美味しいように改良を重ねたものを売ることはできるかもしれないけど、それはまだまだ先かな」
「そっかぁ……」
シルフィードが耳をペタンと寝かせて俯いてしまう。うっ……! そ、そんな顔しないで!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます