第14話 バナナ姫VSラーテル辺境伯3
「ではラーテル辺境伯と」
「バナナ・パインテール姫との友好を記念して〜」
「「乾杯!」」
「「「「「乾杯!」」」」」
バナナ姫一行とラーテル辺境伯たちはジョッキ🍻を掲げて乾杯する。
「ちょっと待つのでござる! ラーテル辺境伯との闘いはまだ終わってないでござる! なんでいきなり宴会が始まるのでござる!」
田宮伊右衛門、今は妻のお岩が憑依した『
「ドワーフ王国に使いに出した精霊馬ゴーレム🥒が、古酒『
「フヒヒヒヒーン!」
胴体から翼を生やしたペガサスモードの精霊馬ゴーレム🥒がなんだか誇らしげだ。
「そうだよー。良い景色を見ながら飲むお酒は美味しいよ〜。野暮はよそうよ。ドワーフ王国の秘蔵の古酒『褒め殺し』なんてお金💰を出すだけじゃ手に入らないんだよー。どんなコネ持ってるのかなあ貴君は?」
真っ赤な甲冑を着たままのラーテル辺境伯が興味深げにバナナ姫を見る。
「大したことではない。向こうの王太子に求婚されただけだ」
「「「「「「ぶーーーーーーッ!」」」」」
ラーテル辺境伯も伊右衛門もジュニアも肉じゃがも、そしてバナナの婚約者であるイケメンエルフのジャック・ドードリアンも飲んでいた酒を吹き出した。
「まったく、何が大したことではないだよ。貴君も隅におけないなあ」
「まさか、バナナ姫さまがモテるとは。いや、体型がドワーフだからドワーフ相手であればアリでござるか」
「ああン? なんか言ったか伊右衛門?」
ミシッ
一瞬空間に亀裂が入る音がするとともに、
「ひいっ! なんでもござらん! ドワーフ王国の古酒『褒め殺し』が飲めて嬉しいでござる!」
「ならばよし!」
バナナ姫の旋風🌪️も無事収まった。
「危なかったでやんす」
「すまなかった、ウイリー。そうだ肉じゃが、グリーズ将軍にヴァンパイアの『裏ドラ』をこちらに寄越すように頼んできてくれ」
「わかったっす」
「ジュニアは古酒『褒め殺し』を小樽に移して持ってきてくれ」
「ははっ! 直ちにお持ちします!」
「ハ、ハニー。ま、まさか、そのドワーフの王太子のプロポーズを受けるつもりなのかな」
ジャックがいまだかつてないほど
「関係者ともども目下検討中だ」
「ええ! そんなあ!」
膝から崩れ落ちるジャック。
「ただの王太子じゃないぞ。どこかの浮気性のヤリチンエロフと違って真面目だし、やり手の鍛治師で甲斐性もあるからな」
「むぐっ」
「ほう。その王太子は客観的にもなかなかの優良物件じゃないかあ」
「ぐはっ」
ジャックはまるで見えない矢が多数刺さってダメージが重なったようだ。倒れ伏し、五体投地の姿勢になって動かない。
「だが、さっきの様子では貴君はドワーフを嫌っているようだがどうなのかなあ?」
「別にドワーフは嫌いじゃない。ただ、エルフである自分がドワーフと言われるのが嫌いなだけだ! ラーテル辺境伯だって、似てるからってクズリ獣人とかスカンク獣人とか言われてもいい気はしないだろう?」
「たしかに一理あるなあ。じゃあ、バナナ姫はドワーフ王太子に嫁ぐ予定なのかなあ?」
足元で突っ伏したイケメンエルフの脚がピクンと跳ねる。
「そう簡単な話ではない。向こうは王太子だし、わたしも王位継承権を持っている」
「あーなるほどねー」
「ココから先は政治もプライベートも絡んでくるのでオフレコだ。二人だけで話そう。サシで古酒『褒め殺し』を飲みながらな」
「いいねえ。でも、そこで
「たった一口で沈没するとはジャックも随分酒に弱くなったものだな」
「いや絶対にそうじゃないと思うよー。まぁいいか。じゃあどこで話をするのかなあ?」
「ここでだよ。召喚、カボチャの馬車🎃」
「おおおおお」
巨大なカボチャの馬車🎃が現れた!
「バナナ姫さま、古酒『褒め殺し』をお持ちしました」
「ご苦労ジュニア。その小樽を馬車に積んでくれ」
「ははっ!」
「さあ乗った乗った」
「お邪魔するよー。おお、これはびっくりだねぇ。中も広いなぁ」
二人で乗り込むとバナナ姫はパタンと馬車の扉を閉めた。
「だろう? では改めて乾杯🍻だ」
「「乾杯🍻!」」
ごきゅっごきゅっごきゅっごきゅっごきゅっ
「「プハーっ!」」
「効くなあ。もう一杯どうだ、辺境伯」
「いただこう。さて、バナナ姫がそんな優良物件をためらう理由が他にもあるのだろう?」
ごきゅっ
「美意識の違いだな。こればっかりはどうにもならない」
ごきゅっ
「ルッキズムという奴か? 貴君にはドワーフの容姿が気に入らないのか?」
ごきゅっ
「違うな。わたしの相手の容姿がどうとかではなく、向こうがわたしに求める容姿が問題だ」
「うん?」
「わたしはエルフだ。今はこんな
「ふむふむ」
「ところが、あのドワーフの王太子はいまのわたしの容姿を見て、一目惚れしたというんだぞ! 冗談じゃない! わたしはドワーフじゃないし、ドワーフになりたいんじゃない! 正直言っていい迷惑だ。わたしは本来のエルフのままでありたいのだ!」
「そんな目で見られたら、それは困るよなあ」
ごきゅっ
「だろう?」
「でも、それだけじゃあないのだろう? 貴君はまだあのイケメンくんに未練があるようだねえ〜」
ごきゅっ
「なんのことだ?」
「またまたあ〜。イケメンエルフの吟遊詩人、ジャック・ドードリアンがはっちゃけ過ぎてたことは私も知っているからねえ。でも、不品行の割には婚約破棄されたなんて噂は聞こえてこないんだよー。どうしてかなあ?」
ごきゅっ
酒を飲みながらのため、口のところが開いた兜の下でラーテル辺境伯がニタアと笑ってるのが見える。
「ちっ。飼い犬の不始末は飼い主の責任だからな」
「素直じゃないねえ」
「あんたみたいに勘のいい奴は嫌いだ!」
「やっと認めたねえ。向こうも未練がありありだから手を貸そうか?」
ごきゅっ
「余計なお世話だ。あのバカエロフはもうちょっと性根を叩き直さないとどうしようもない」
「こじれてるなあ。横からかっさらわれても知らないよ〜」
ごきゅっ
「ちっ」
立ち上がるバナナ姫。
「おや、どうしたんだい?」
「酒のつまみを取ってくる」
そう言うとバナナ姫は馬車を降りる。
「悪いねえ」
「謝るのはこっちだ。気を使わせたな」
「いやいや」
手をヒラヒラ振るラーテル辺境伯。
「それとは別に、すまん」
「へ?」
「ウイリー、ラーテル辺境伯を五点式シートベルト型に馬車の座席に固定!」
「合点でやんす!」
フシュオオオオ
使い魔のはらぺこウイリーが口から糸を吐いてラーテル辺境伯の体を固定する。
「え? 一体なんのプレイをする気かな?」
「ちょっとハードだけど勘弁してくれ。ウイリー! カボチャの馬車🎃の車輪を吸収してから馬車を繭で包んでくれ」
「アイアイサーでやんす!」
ずぞぞぞぞー ガコン ガコン
馬車の車輪をウイリーは吸収する。馬車がその分落下する。
フシュオオオオ
さらにウイリーが糸を吐いて車輪を失ったカボチャの馬車🎃を繭でくるむ。
「ねえ! ほんとに何をする気だい!」
繭の中からラーテル辺境伯の焦った声がする。
「メテオも耐えるその甲冑があれば大丈夫。死ぬほど気持ち悪くなるだけだ。せえの、どっせええええ!」
バナナ姫はカボチャの馬車🎃の下部に手を引っ掛けると超背筋力でゴロンとひっくり返した。
「うわああああああ!」
ゴロン、ゴロン、ゴロン、ゴロンゴロン、ゴロンゴロン、ゴロンゴロゴロ、ゴロンゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
「なんじゃこりゃあああああああああっ!」
「「「辺境伯さまああああ!」」」
絶叫するラーテル辺境伯乗せた馬車はボールのように山の斜面を延々と転がって落ちていく。
「おむすび🍙ころりんみたいでござるな」
「そうでやんすね」
どごーん
繭になった馬車は先ほどバナナ姫がメテオで作ったクレーターに落ちて止まった。それを山上から見下ろしてバナナ姫が言う。
「計画通り」
「バナナ姫、吾輩を呼んだであるか?」
大きなこうもり傘を日傘代わりにしてヴァンパイアのウラドラート・ドラクールが嫌そうな顔でこちらに来た。
「丁度いいタイミングだ、裏ドラ! 麓のあのクレーターまで転移門をつないでくれ!」
「そんなことであるか。お安い御用である」
ブオン
目の前に転移門が現れた。
「そら、ジャックもさっさと起きてついて来い! でないとお前の上にもドリアンを降らせるぞ!」
「ううっ。わかったよ、マイエンジェル」
バナナ姫一行は転移門をくぐり、ラーテル辺境伯が入っている繭の前にきた。
「おーい、辺境伯生きてるかあ?」
「ゔゔ、
「わたしの勝ちだ。魔法攻撃も物理攻撃も無効の
「ゔん。脱げだよー」
「「なんと!」」
「よし。ジャック、完全回復を頼む」
「OKベイベー、
「では、今助けるぞ!」
繭を切り裂きカボチャの馬車🎃に乗り込むバナナ姫。
「やはりそうか。
「いやあ、助かるよー」
バナナ姫に手を取られて繭から出たラーテル辺境伯。
「「えええええええ!」」
そのラーテル辺境伯を見て、ジャックと伊右衛門が驚いたところで、次回へつづく。
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