第一部 第3章 爆裂エルフと世界の危機

第15話 バナナ姫と濃いのと恋の複雑系❤️

 バナナ姫に手を取られて繭から出たラーテル辺境伯。


「「えええええええ!」」


 出てきたカボチャの仮面🎃を被った人物を見て、ジャック・ドードリアンと田宮伊右衛門が驚く。


「アナタがパンツァー・ラーテル辺境伯⁈」


「そうだよ。私がパンツァー・ラーテル辺境伯だ! えっへん!」


 ラーテル辺境伯はそこそこの膨らみがある胸を張る。そう、ラーテル辺境伯は引き締まったボディに出るところは出ている健康美女だった。しかも、ピンクのブラとパンティー👙の下着姿だ。胸の谷間には首から吊るされた重そうなハンマーの短いが挟まっている。なんとなくエロい。


「うむ? 伊右衛門どうした?」


 息をするのも忘れて固まっている伊右衛門を、バナナ姫がトントンと何回か小突く。すると、伊右衛門が再起動を始めて大きく息を吸い込んだ。


「は、ハダカっ、ハダカだあっ! ハダカでござるっ! ハダカの女子おなごでござるうう! ハダカの女子が出てきたでござるううう!」


 伊右衛門は真っ赤な顔でラーテル辺境伯を指差して絶叫した。


「伊右衛門、うるさい! ハダカ、ハダカとお前は思春期か!」


「そうだよー。失敬だな、貴君は! 私はハダカではないぞー! ブルマーは脱いじゃったけど、ちゃんと下着👙は着ているよー! おっぱいも股間も残念だがちゃあんと布地の向こう側だぞー!」


 そう言うと🎃仮面下着👙女子のラーテル辺境伯は伊右衛門に抱きつく。


「痴女だあ! 痴女でござる! カボチャ🎃の仮面の痴女に襲われてるでござる! それがしにはお岩と言う妻がござるのに! 貞操の危機でござるうう!」


「よいではないか、よいではないか! また関節技でからみあい、目くるめく痛ギモの快楽の海に溺れようよー。うりゃうりゃうりゃ!」


パーン! パーン!


 バナナ姫がハリセンで、伊右衛門とカボチャ🎃仮面女子の頭を叩く!


「伊右衛門うるさ過ぎ! ラーテル辺境伯も伊右衛門に抱きつかない!」


「うう、異世界の女子は怖いでござる」


 伊右衛門が体育座りで自分を抱きしめてガタガタ震えている。


「はははは、伊右衛門の反応が面白かったからー、ノリでつい」


「また嫉妬深い超・お岩スーパー・ロックとバトルをしなきゃならなくなるぞ」


「そのときは赤い甲冑、しゃー・リーズナブルを再装着するから大丈夫だよー!」


「このバカチン! せっかく苦労して解放してやった甲冑をまた着るんじゃない! 話が進まないだろうが!」


「もう大丈夫だよー! おかげで脱ぎ方がわかったからあ! お酒飲んで酔っぱらってからぐるぐる回ったり、ごろごろ転がればいいんだよねー!」


「まぁそういうことなのだが」


「あっ甲冑から解放してくれた御礼がまだだったねえ。みんな本当にありがとう! これから私のことはパンツァーと呼んでおくれよ」


「うむ。わかった。ではパンツァー、さっそくその『打ち出の小槌』をいただこうか」


 バナナ姫はラーテル辺境伯の胸の谷間に挟まるハンマーに向かって手を差し出す。


「ああ、このハンマーかい? あげる、あげるよー。無条件降伏してるんだからねえ。ハンマーだけだなんてケチくさいこと言わないよ。この私ごと貴君に全部あげるから、もらっておくれよー」


 そう言いつつ今度はバナナ姫に抱きつくラーテル辺境伯。


「「ええ⁈」」


「パンツァー、なにをする気だ!」


「バナナ姫。貴君の強さ賢さに私は惚れたよー! 二人で愛の王国を築こう!」


「冗談はよせ! ええい、離さんか! 変態痴女はいらん!」


「なんだい! つれないねえ。でも、貴君ほどの魔力量の持ち主なら、そのハンマーの『事象改変機能』が使えるんだろう?」


「よく知っているな」


「ウラドラートに聞いたのさあ」


「なるほど裏ドラは魔王国出身だからな。答えはイエスだ。わたしはその機能を使うためにこの『打ち出の小槌』を探し求めていたのだ」


「だったら、貴君が『打ち出の小槌』でチョイチョイとチ▷コを生やせば問題解決だよー。私と子作りができるじゃないかあ」


「なにが悲しうてパンツァーとの子作りのためにわたしがチ▷コを生やさなきゃならんのだ! 却下だ、却下!」


「じゃあ、私が生やして貴君がはらむのか? それもアリかもしれないねえ」


「だが断る! ぜーったいに断る! お断りだ! どりゃああ!」


ドスっ!


 バナナ姫はラーテル辺境伯を引き込んで、蹴飛ばすような巴投げで空高く投げ飛ばす!


「うわあああああああああ」


 宙を舞ったラーテル辺境伯が墜落する。


ドテッ


「貴君は乱暴だなあ。痛いじゃないか。だが、それがいい!」


 下着姿👙のラーテル辺境伯が立ち上がる。


「わたしは全然よくない!」


「パンツァーさま。このようなもので恐縮ですがボクのマントをお使い下さい。そのお姿では刺激が強過ぎます」


 ジャックはラーテル辺境伯の元に駆け寄ると、自分が着ていた白いマントをラーテル辺境伯に掛けた。ラーテル辺境伯はそれをクルクルと器用にその身に巻きつける。


「ほう、ジャックくん。なかなか気が利くじゃあないか。ありがとう」


「礼には及びません。ところでどうしてパンツァーさまはカボチャ🎃の仮面を被っているのでしょうか?」


「いやあ、さすがにすっぴんで殿方の前に出るのも恥ずかしくってねえ。口紅さえ塗ってないんだぞ! そしたらバナナ姫が気を利かせてくれたのさ」


「そういうことだ」


「オカシイのでござる! すっぴんは恥ずかしいのに、ハダカが恥ずかしくないだなんて絶対にオカシイのでござる!」


「だーかーら、ハダカじゃないってばあ」


「伊右衛門、ちょっと黙れ!」


「うー」


「でも、可能であればパンツァーさま、貴女の御尊顔を拝見致したく存じます」


「うーん。イケメンにおねだりされちゃったよー。本当は恥ずかしいんだけど、まあいいかあ。笑うなよー」


 そう言うやラーテル辺境伯はあっさりとカボチャ🎃仮面を脱いで素顔を晒した。前髪だけは黒く、残りはプラチナブロンドのショートカット。やや吊り目でぱっちりと大きな黒い瞳。ニカっと白い歯を見せて微笑むとエクボができた。溌剌とした健康美女の顔がそこにはあった。


「おお、さすがはパンツァーさま! なんとまぶしくたくましいその笑顔。全身から発するその生命力と相まっての素晴らしい健康美! その魅力の虜にならずにいられましょうか!」


 ジャックがラーテル辺境伯に見惚みとれて褒め称える。


「ふふん。れたかい? 面と向かって言われると照れるじゃあないか。でも素直なところが気に入ったよー! そうだ、バナナ姫! どうせ貴君がドワーフの王太子と結婚するのなら、貴君の婚約者のジャックを私に譲ってくれないかなあ?」


「かまわないぞ」


 バナナ姫が秒で即答する。


「「なんですと!」」


 ジャックと伊右衛門が驚いた。


「それは本気で言っているのかなあ。私としては気が利くイケメンで、完全回復パーフェクトヒールもバンバン使えるヒーラーで、武装解除スキルや補助魔法も使える有能な人材は喉から手が出るほど欲しいんだよー。できれば配偶者にして彼の子供をバンバン産みたいくらいさあ。さぞや可愛くて優秀な子供を授かるだろうねえ」


「ふん。バカエロフとは言えさすがにタダと言うわけにはいかないがな。払うべきものさえ払ってもらえるならば、譲るぞ」


「ええ? そうなのー? 本当にいいのー?」


「ああ。ジャックが遊び倒して作った借金の山はわたしが婚約者だからこそ肩代わりしてきた。慰謝料以外にその分の損害賠償も当然請求するが、パンツァー、アナタに払えるかな? フフフ」


「それっていくらくらいだい?」


「ちょっと耳を貸してくれ」


「いいよー」


「ゴニョゴニョゴニョゴニョ」


「ちょっと待ちなよ! その金額って本当マジなの? 桁間違ってない?」


本当マジだ」


「ないわー。ありえないわー。バカなの? 貴君たちって真性のバカなの?」


「全く面目ない」


「ええ? どうしてだい?」


 バナナ姫は恥いらんばかりなのに、ジャックは何が問題かすら理解できていないようだ。


「バナナ姫、よーくわかったよ。約束のハンマーあげるから、代わりに貴君のハリセンをおくれよー」


「ええ?」


「いいから早く早く」


「わ、わかった」


「はーい、これで交換成立だねー」


 ラーテル辺境伯はジャックの方に向き直るとニコリと微笑んだ。


「ジャックくーん!」


「な、なにかな?」


ブンッ


 ラーテル辺境伯がハリセンを振りかぶる。


「こおの、アホンダラゲがあああああっ!」


パパーーーーーーーーーーーン


 音速のハリセンチョップがジャックの臀部ケツを襲った。


「ひゃううううん!」


 アルファベットの「C」の字のように背中側に全身を反らしたジャックは、そのまま水平飛行でカボチャ🎃の馬車だった繭に激突💥。


バッコーーーーン


 繭を爆裂させて、その瓦礫に埋もれた。


「モノには限度があるよー! 婚約者がいるのに、なんで愛人や風俗に国家事業レベルの金を使ってるんだい! このヤリチンエロフがあ!」


「バナナ姫さま、そのお金とはいかほどでござるか?」


「土地代は別で、大坂城が余裕で建てられるくらいだな(注・大林組の試算で約221億円)」


「ば、馬鹿でござるーーッ! ジャックは天井知らずの大馬鹿者でござるーーッ!」


「パンツァー、どうする? ジャックを引き取るかい?」


「いやあ、参ったよー。ジャックくんの放蕩ぶりはわたしの想像の斜め上だあ。彼をもらったらこの辺境伯領が破産してしまうよ。そしたら辺境伯領ごとバナナ姫に身売りするから、私も貰ってくれるかい?」


「ぜーったいに断る!」


「それじゃあ、残念だけどここは涙を飲んで諦めるよー」


 ラーテル辺境伯はちっとも残念ではなさそうな口ぶりで言った。


「バナナ姫の苦労がよくわかったよー。貴君以外にジャックのパートナーは務まらないだろうねえ。さあ、とっととあのオタンコナスをお持ち帰りしておくれ!」


「ああ、わかった。だが、その前にやるべきことをやらねばならん!」


「姫さま、いよいよでやんすね!」


「ああ、ついにわたしがあるべき姿を取り戻すときが来た!」


 バナナ姫は『打ち出の小槌』を天に向かって突き上げて、膨大な魔力を流し込む。


「『打ち出の小槌』よ! わたしを元の八頭身の高貴で美しい姿に戻しておくれ!」


『打ち出の小槌』が虹色に輝き、その光がバナナ姫をやさしく包んだ。



 というところで次回につづく。

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