第13話 バナナ姫VSラーテル辺境伯2
「みんなも、脱いじゃえ!」
スポポポポポーン!
ジャックの強制
伊右衛門はふんどし一丁に。ジュニアは黒のレスラーパンツ一丁に。肉じゃがこと細マッチョのチーター獣人のニック・Q・ジャガーは星柄のトランクス一丁になった。
肥満体のグリーズ・リー将軍は顔の覆面も衣服も脱ぎ去り、青白縦ストライプのデカパン一丁になっているのだが・・・・・・
「「「「「えええええ!」」」」」
「パンダ🐼がいる・・・・・・」
「軍人のくせにパンダ🐼獣人だと舐められるから、今まで覆面で隠し通してきたのに! ばれては仕方がない。いっそ殺してくれ! うおーん!」
パンダ🐼獣人のグリーズ将軍が泣き出した。
「将軍、落ち着いてください!」
「そうっすよ、パンダ🐼獣人だって熊は熊ですよ! いいじゃないすか!」
「そうだ! 太ったオッサンの『くっころ』は需要がないぞ!」
「グリーズ・リー将軍。問題は外見ではないよ、中身だよ! 貴君の私に対する忠誠とその実力が衰えたわけではないなら、このまま将軍として私に仕えてくれたまえ さあ、これで涙を拭くのだ!」
「パンツァーさま、ありがたき幸せでございます」
グリーズ・リー将軍がラーテル辺境伯に渡された赤い布で涙をぬぐう。
「「よかったですね、グリーズ将軍」」
「うんうん」
「と言うか、ジャックの強制
バナナ姫はラーテル辺境伯を見上げて言った。ジャックの技が発動したのに、ラーテル辺境伯は相変わらず赤い甲冑のままだった。
「バナナ、ごめん。ボクの力不足だ。もっと修行しないと・・・・・・」
「おい、ジャック! ナニを言っている! そんなエロ修行は却下だ! これ以上
「ちっ。気づかれたか」
「いやあ、ジャック君。貴君の技はなかなか強烈だった。勝手に踊らされてしまうし、私もついアレを脱いでしまったよー」
「ええ?」
「なにを脱いだのだ?」
「ブルマーだよー」
「へ?」
「だから、ブ・ル・マー。ちなみに色は赤だね」
「ちょっと待て! アンタはブルマーなんか穿いてたのか!」
「そうだよ! ほら、さっきグリーズ将軍に貸したアレ」
ラーテル辺境伯はそう言うと、グリーズ将軍を指差す。
「変態だ! 変態だ!」
「むう。貴君は失礼だなあ。ブルマーは股関節の動きを妨げないから動きやすいんだよ」
「ううっ。頭が痛くなってきた。ブルマーは甲冑の下に穿いていたんだよな?」
「当たり前じゃないか。甲冑の上からブルマーを穿いていたら変態だよ! まさかエルフ王国はそうなのか?」
「違う! 変態に変態扱いされたくないぞ! だが、甲冑の下のブルマーをどうやって脱いだんだ?」
「そりゃあ、腰の甲冑にはギミックがついていてカパッと開くようになっているから、ブルマーやパンツは着替えができるよ。そうでないとトイレの時困るじゃないかあ」
「排泄ができる? 食事もできるのか?」
「もちろん! 食事や歯磨きのときフルフェイスの兜の口元がシャキーンと開けられるから。でないと生きていけないよー」
「なるほど、把握した。では食事や排泄のときが無防備でチャンスか」
「エグいねえ、貴君は。さすがにそれはヒトとしても絵柄としてもどうかと思うからナシで頼むよ」
「姫さん!」
「バナナ!」
「「「「バナナ姫さま!」」」」
「わかってる! 考えただけだ!」
「ならいいんでやんす」
「くっそ〜。目の前に『打ち出の小槌』があるのに、おあずけだなんて! 魔法は無効、打撃も無効。斬撃も無効だろうな・・・・・・」
「もっちろん!」
「なんか腹立つな。条件が厳し過ぎる!」
頭を抱えるバナナ姫。
「バナナ姫さま、某に考えがござる」
今度は伊右衛門だ。
「なんだ、伊右衛門?」
「甲冑の防御力と関係のない攻撃ができればいいのでござるよ!」
「そんな都合のいい攻撃なんて・・・・・・」
「ござる! 関節技がござる! 関節を可動域の限界以上に動かして力を込めれば、きっちり痛みを与えられるでござる! 某にもその心得がござる! これはどんな甲冑でも防げるものではござらん!」
「「「「「おお!」」」」」
「でかした、伊右衛門! その手があったか!」
「面白そうだねえ! 私はなんだかワクワクしてきたぞ!」
「伊右衛門、キミはどこでそんな技を習ったのかい?」
「妻のお岩からでござる」
「「「「「「え?」」」」」」
「某は剣術はからっきしでござる。しかしながら、素手での組み打ち乱取りはお岩相手に毎晩挑んでいたゆえに自信があるでござるよ。関節技も身につけたでござる!」
「ところでお岩さんや伊右衛門は何流なのだ?」
「蛇の穴道場の『すとろんぐすたい
「プロレスやないかい! なんてこった。お岩さんも転生者だったのか!」
「いやあ、お岩は激しくてなかなか勝たせてもらえないが、勝てばそれはもう熱烈合体で・・・・・・」
スパーン!
バナナ姫が懐から取り出したミニハリセンで伊右衛門の頭を全力で叩く。
「誰がお主たちの夫婦生活を聞いておるかあ!」
「叩いたでござるな! お岩にしか叩かれたことはないでござるのに!」
「御託はいいから、とっととラーテル辺境伯に関節技をかけて来んか!」
「ひいっ! わかったでござる! ではラーテル辺境伯殿、御無礼つかまつるでござる」
「うん、よろしく頼むよー」
「まずはアキレス腱固めでござる!」
「うほっ! この単純だが確実に伝わる延ばされた足首の痛み! いいよ、すごくイイよっ!」
「次は
「ううっ! 先ほどとは違った足首が捩じ切られるかのような個性的な痛みだ! すごくイイよ! 涙がこぼれそうだよ!」
「続いて股裂きと膝十字固めの複合技でござる!」
「ブラヴォー! 膝関節が逆に極められたスリリングな痛みに加えて、限界まで広げられた股関節がもたらす肉体的な痛みと羞恥心という精神的ダメージのトリプルハーモニー! この
「なぜかグルメの感想を聞かされている気がするでやんす」
「ラーテル辺境伯って意外と体が柔らかいんだね、ハニー」
「そうだな。だが、このままだとまずいな。伊右衛門はラーテル辺境伯に痛みを与えているのに」
「「「全くダメージを与えられていない!」」」
「伊右衛門は手加減しないで相手の関節を壊すなんてできそうもないでやんす」
「壊しても、このボクがきちんと治してあげるからやっちゃえばいいのに」
「手加減した関節技の結果、ほどよい痛みが快楽になってしまうとは何と言う皮肉だ」
「こうなったら、サソリ固めでござる!」
「ああ、痛い、痛いよ! まるで夢を見ているようだよ。左右の足首を同時にそれぞれ別の形で極めるという繊細な痛みに加えて逆エビ固めによる腰への大胆さMAXな痛み。ああ、イイっ! 伊右衛門の関節技が良すぎるっ! とってもイイっ!」
「ラーテル辺境伯ってやっぱりドMの変態だったんだねえ、マイエンジェル」
「アレを見るでやんす! 伊右衛門の御守り袋からお岩さんの分霊体が出てきて実体化するでやんす!」
「なぜこのタイミング!」
「伝説のランプの魔人みたいだね、マイエンジェル」
「初対面の時よりごっついんでやんす」
今回のお岩さんは普通の姿ではなく、まるで元プロレスラーの某アクション俳優のような筋肉の塊であった。そう、例えるならば『
『伊右衛門さま!』
「あ、お岩!」
『わたくしというものがありながら、何ゆえ赤の他人とイチャイチャしているのでございますか、いやらしい!』
「この甲冑の赤を貴君も気に入ったのかい」
「お黙りなさい!」
分霊体とは要するに生霊、つまりオバケである。普通の人ならお岩さんを見ただけで逃げ出すものだ。だが、ラーテル辺境伯は脳筋で肝っ玉も太くて心臓に毛が生えているのではないかと言われるくらい度胸がある。オバケでビビるようなタマではない。
「いや、コレは人助けでござるぞ、お岩」
「貴君が伊右衛門殿の奥方か! いやこのような痛くて気持ちイイ世界があったのだなあ。ありがとう。礼を言うよー。伊右衛門殿、もっともっと私に痛ギモな関節技をプリーズ!」
「目的が変わっているでござる!」
プチっ
『
そう言うとお岩さんの分霊体はシューッと細い霧のようになって、伊右衛門の身体の中にどんどん入っていく。
「え? なにするでござるかあああああ!」
ピカーと伊右衛門の姿がまぶしく輝き見えなくなる。そしてその光の中から現れた巨体はこう名乗った。
「合体、
そう言うやいなやラーテル辺境伯の足首を掴むとハンマー投げのように自らも回転して振り回し始めた。
「あれじゃあ『
「じゃあ合わせて超人◯ックでやんすか?」
「それは見た目が違い過ぎる別人だから」
「飛んでけーッ!」
ラーテル辺境伯は
ドカン
頭から落ちてきたラーテル辺境伯はなにごともなかったのように立ち上がって歩き出すが、足がもつれてコケる。
「「「辺境伯さま!」」」
「バナナ、あの人大丈夫かな」
「メテオ食らってピンピンしている奴があれくらいでダメージが通るものか!」
「ごめんごめん、目が回っただけだよ」
しばらくしてラーテル辺境伯は起き上がった。
「ちっ! ノーダメージか!」
「やはり」
「いや、そうでもない。攻略の糸口が掴めたぞ。だがあと一手足りないな」
「ヒヒヒヒヒーン!」
そのとき空から馬の鳴き声がした。見上げるとペガサスのような翼を生やした精霊馬ゴーレム🥒が飛んでいる。
「これだあああ!」
つづく
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