第27話 3年ぶりの再会。
俺たちは比べ合って上手くいく未来が見えて良かったのだが、良くなかったのは七海のところだった。
10日ほどして、俺と葉子の所に、見知らぬIDから[すみません。小菅大樹と申します]とメッセージが入り、すぐ後に七海から、[今のが婚約者の大樹。話を聞いて]とメッセージが入る。
要約すれば、俺と七海のメッセージを見て、ヤキモチを妬いた小菅大樹さんは手に絆創膏を増やしながら、七海の為にオムライスを作ってみたがどうにもならない。
七海もどんなに下手くそでも酷評せずに食べたが、直後に吐いてトイレから出られずに、熱まで出てしまい、仕事を休んで病院に行ってしまったと言う事で、真面目な小菅大樹さんは、葉子には[恋人と元彼女の再会を、どうにか許していただけないか?]と相談してきて、俺には[七海から店名を聞いて調べました。メニューにオムライスはないのは見ましたが、勤め先でなんとか葉子にオムライスを出してくれないでしょうか?正規の料金をお支払いします]と願ってきた。
葉子は頻繁なのは困るけどたまになら、後は初回だけは小菅大樹と七海で店に来ること、俺は店舗責任者になっていたので、原価的に1番近いガパオライスの値段で、カウンター席で、他言無用でコッソリとでよいならと条件を付けた。
そして俺はキチンと男として、七海が食べにくる前にバイト達に、「元カノとその婚約者が食べにくるけど邪推しないで。気にしないで」と言い、先に休みの日に葉子を店に連れて行って「俺の婚約者の蒲生葉子さん」とバイト達に紹介をした。
葉子はそれだけで顔を真っ赤にして、「食べ物屋さんにお土産って困って、旭…旭さんと相談して栄養ドリンクにしました!皆さんで飲んでください」と言って栄養ドリンクを出して食事を食べて帰っていく。
予約当日。
まあ七海は3年経っても七海だった。
予定より30分早く現れた七海は、バイトのいらっしゃいませを遮って、「おーい!旭!元カノが来たよ!」と俺を呼ぶ。
横では体格は少しいかつい感じだが、穏やかな表情の男性が、「七海、ご迷惑だよ」と言っている。
バイト達のどよめきを無視して、「3年ぶり。久しぶりだね七海」と言ってから、小菅大樹に「小菅さん、初めまして。相田旭です」と挨拶をしてカウンター席に通す。
前もって言ってあったのに、バイト達はとんでもない風景に驚き、人気の客席に通さずにカウンター席な事も気にしたが、俺は気にしないでと言って少し席を外すと、葉子に「もう来た」とだけメッセージを送った。
俺はカウンターに座ってニコニコとする七海を見て、約10年の時を思い出しながら、七海の好みを思い出して料理をする。
オーダーを取ったバイトは、「ガパオライスじゃ?」と言ったのだが、「オーナーには内緒にして。今度俺から説明するからさ」と言いながら七海の為のオムライスを2人前作って、飲み物は甘くしたカフェオレを出す。
七海は目を輝かせて、「旭!ありがとう!覚えていてくれたんだね。このカフェオレとオムライスだよ!」と言うと、「ほら!大樹も食べて!」と婚約者に言う。
婚約者は七海の喜び具合が面白くなかったのだろう。微妙な顔で困惑しながらも、俺を見て会釈すると、ひと口食べて「美味しい」と言ったので、「ありがとうございます。ごゆっくり」と言って仕事に戻る。
バイト達のヒソヒソが耳障りだが、別に問題はない。七海の胃袋を掴んでしまった俺と、仕事に理解のある小菅大樹、その後ろめたさのない清い関係だと言えばそれで終わる。
ディナーの仕込みと発注、バイトのシフトを確認していると、店の扉が勢いよく開いて、またもバイトのいらっしゃいませを無視して、店に飛び込んできたのは葉子。
もうバイト達は修羅場でも期待したのだろう、「店長!彼女さんですよ!?」と言って俺の元にすっ飛んでくる。
俺は「ああ。来たね」と言って店に出ると、葉子は「早稲田さん!」と言って七海の横に立った。
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