第2話 2人のクラスメイト。
同窓会は大成功だったのだろう。
久しぶりに会う連中は皆、近況と進路を話す。
俺は人当たりが良かった方なので、たくさんの人達と話し、わざわざ休みなのにきてくれた担任とも話ができた。
担任は大学の話に肩を落として憤ってくれて、それだけで少し救われた気になった。
自分の中で少し消化できたのに、また苛立ったのは、同じ高校に通って、同窓会の手伝いに選ばれなかった、俺の大学進学を貶してきた同級生は、別の奴が俺が候補にしていた大学に行くと聞いても、悪く言わなかった事だった。
ただ、俺だけを悪く言いたかったのだと気づいて嫌な気持ちになる。
ここで、世の中には無責任なアドバイスや、足の引っ張りがある事を知って、新たな消化不良が目覚めた。
そんな中、「相田君、久しぶりだね」と声をかけられた。
振り向くと目の前には同じクラスだった
俺が「あ…久しぶり」と返すと、早稲田七海は「同じ街に住んでるのに、会わなかったね。元気?」と聞いてくる。
「元気だよ」
「進路は?」
「専門」
「私もだよ」
早稲田七海はコンピューターを使った専門学校に行くらしく、話を聞いてみると同じ駅の反対同士だった。
「今度会おうよ」と早稲田七海は言ったが、どうせそれは社交辞令で、新しい生活が始まるとそんな気はなくなる。
所詮保険でしかない。
だがここで断る事は良くないので、「ん、いいよ」と言って、メッセージアプリのIDを交換した。
「連絡するね」
「わかった」
まあ連絡は来ない。
そう思った時に、ツツジに会いたいと言った蒲生葉子の事を思い出した。
自意識過剰もみっともないが、鈍感も同じくらいみっともない。
その気持ちで、俺は来ないかもしれない早稲田七海からの連絡を待つことにした。
蒲生葉子は女友達と話していて中々会わない。
だが今更会って何を話すのか、もしかしたら会わない方が素敵な思い出として、いつか処理できるかもしれない。
俺がそう思った時、小走りで駆け寄ってきた蒲生葉子は、笑顔で「久しぶりだね旭くん」と挨拶をしてくれた。
「うん。久しぶり。元気?」
「元気だよ。旭くんは?」
「元気だよ」
「ツツジちゃんは?」
これには驚いた。
蒲生葉子はツツジの事を忘れていたと思ったが、「覚えていてくれたんだ。もう歳だったから、一昨年老衰で亡くなったよ」と言うと、悲しそうな顔をした蒲生葉子は、「元気出してね」と言ってくれた後で、「お墓とかあるの?」と聞いてきた。
「ううん。ウチの親はそういうのしないから。写真だけ俺の部屋にあるよ」
「そっか、お墓があったらお参りしたかったよ」
少し残念そうな顔をした蒲生葉子は、「今度ツツジちゃんの写真とか頂戴」と言って、メッセージアプリのIDを交換しようと言ってきた。
俺は断ることもなくそれを交換して終わらせる。
同窓会が終わると、二次会といった感じで、ボーリングに行く者や、カラオケに行く者、ファミレスでしゃべる者なんかが居たが、どれも気乗りしなくて家に帰ると、家では兄や両親が、「二次会にも誘われないのか?」、「夕飯の支度が面倒くさい」と言ってきた。
だが、ここで誘われて行っていたら、「まだ子供なのに」だの、「社交辞令を信じて馬鹿みたい」だの、散々悪くいわれる事はわかっている。
それもあって気乗りしなかった。
そんな中、早稲田七海からは[あれ?相田君は二次会行かなかったの?]と早速メッセージが入った。
[うん。気乗りしなかったんだ。早稲田さんは?]
[私はファミレス組。皆も相田君を気にしてたよ?今度は一緒に行こうよ]
[ありがとう。また機会があれば行くよ]
早稲田七海が「約束だぞ」と書かれたスタンプを送ってきた所で、メッセージは止めた。
皆といる時に邪魔をしてはいけない。
俺はメッセージアプリを止めて、早稲田七海の事を思い出していた。
同じクラスだった事と、案外生活圏が似ていたのか、中学生の頃は、よく商店街にお使いに行かされた時なんかに会う事があって、暇だからと買い物に付き合ってくれた事を思い出した。
当時は「暇なんだなぁ」くらいに思ったし、漫画を貸したりもした。
そういえばあの漫画は最後まで読んだのだろうか?今度話す機会があれば聞いてみようと思った。
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