10
家を出た陽南が向かった先はSRM日本支部。その途中で貰っていた知真の名刺にある刑事部第一課の番号へ連絡し事前に許可を貰った。
「あっ、ひなちゃん! こっちだよ」
SRM日本支部に足を踏み入れると左手から七海の声が聞こえた。顔を向けるとそこには陽南の方へ歩いて来る七海の姿。
「今日は支部長の代わり私が付き添うことになったんだよ」
「突然押しかけてすみさせん」
「いーよ。どうせそんなにやることも無かったし」
「ありがとうございます」
「それじゃいこっか」
「はい」
陽南は歩き出した七海の後に続きエレベーターまで足を進めた。
「そう言えばひなちゃんって正面からここに入るの初めてじゃない? といっても来たのは二回目か」
「そうですね。前回は屋上からでしたから。でも、一階は普通の警察署なんですね」
「まぁ一応ここも警察署だからね」
「でもよく考えたらちょっと特殊なだけであって役割は他の警察とあまり変わらないので中も他と同じか」
それは七海に向けてというより自分へ向けての呟きだった。そんな会話をしている内にエレベーターは地下二階へ到着。エレベーターを降りるとデスクの所には昨日とは違う警察官が座っていた。それは白髪混じりで優しそうな初老の男性。
「しげちゃんやっほー」
七海は手を挙げながらそう親し気に話しかけた。
「これは七海さん。お疲れ様です」
そんな七海に対し男は丁寧に返事をした。その後に男の視線が陽南へと向く。
「お客さんですか?」
「そうそう。雨夜陽南ちゃん。それでこっちは利﨑君と一緒にここの警備をしてる田中茂和。通称、しげちゃん」
間に立つ七海は二人に互いを紹介した。それを聞き名がら陽南は心の中で恐らくだがその通称は七海しか使ってないだろうと思っていた。
「どうも初めまして」
「こちらこそ」
立ち上がった茂和と陽南は互いに頭を下げ挨拶を交わした。
「かず、じゃなかった。支部長から連絡きてた?」
「はい。きてますよ。お二人が来たら中へ通していいと」
「それじゃひなちゃんいこっか」
「あの!」
早速、アレクシスの収容されている収容部屋まで歩き出そうとした七海を陽南の声が呼び止めた。
「ん? どうした?」
「あの、無理ならいいんですけど。私一人で行ってもいいですか?」
出来るのならという気持ちが陽南の声を少し控えめにさせていた。
「んー。いいよ」
ほんの少し考えた程度で七海はあっさりと了承した。
「え!? いいんですか?」
だが茂和はその答えに驚いた様子だった。
「まぁいいんじゃない? ひなちゃんなら襲われる心配もないし。そもそもあのガラスの強度はすんごいし大丈夫でしょ」
「でも一応、伊勢支部長に許可をもらった方が……」
「いいよいいよ。それに支部長は今忙しいからね」
「――七海さんがそういうのなら……」
あまり気乗りはしなさそうな様子だったが押される形で茂和もその提案に同意。
「ありがとうございます」
「わたしはここで待ってるから用が済んだら戻って来てね」
「はい」
「じゃあしげちゃん開けたげてー」
「はい」
茂和がコンピュータをを操作すると一枚目のドアロックが解除された。そのドアを開け通路を通り茂和が開けた二枚目のドアを通る。
そして昨日ぶりに収容部屋へ足を踏み入れると、ガラスの向こうでは上半身裸のアレクシスが逆立ちで腕立てをしていた。ドアの開く音で顔を上げたアレクシスは陽南の姿を確認すると逆立ちを止める。
「早いな。もう引き受けたのか?」
「いえ、まだよ」
「俺は次に来る時は――」
「これはどういうこと?」
陽南はアレクシスの言葉を遮りポケットからあの写真を取り出した。アレクシスはその写真を見る為にタオルを肩に乗せ陽南に近づく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます