いけいけ勇者様29

最上司叉

第1話

花の女を倒して俺たちは街に帰ってきた。


「おい、いつまで着いてくる気だ?」


「なに、気にするでない」


「…」


この会話ドラゴンの女と何回目だ?


そんなことを考えているともう家の目の前だった。


俺たちはドラゴンの女を無視して家の中に入る。


「ただいま」


「お帰りなさい」


「どうだった?」


「なんとか倒した」


「そうか、これで安心だな」


「あぁ」


「魔王様後ろの女の人は誰ですか?」


「!!」


俺はその問いかけに驚き振り向いた。


「なんでいる?」


「なに気にするでない」


「気になるわ」


俺との会話をしながらドラゴンの女は家の中を興味深そうに見ている。


「もう遅いから食事にしましょう」


女は言った。


「そうだな」


俺たちはダイニングキッチンに向かい自分の席に座る。


ふと見るとちゃっかりドラゴンの女も空いた席に座っている。


「何してる?」


「なに気にするでない」


「またそれか」


「食事と言うておうたから頂こうと思ってな」


「山にはいつ帰る?」


「なに気にするでない」


「…」


俺は街が物珍しいのかくらいにしかその時は考えていなかった。


「どれ、食事も終えたことだし寝るとしようかの」


「!!」


「泊まるつもりか?!」


「なに気にするでない」


「山に帰れ!!」


「まぁまぁ、こんな夜中に女の人を1人で返す訳にもいきませんから」


「そうだぞ、お主には人の心がないのかの」


「ぐっ…」


「…今晩だけだからな」


「ほっほっほ」


そして俺たちは自分の部屋に戻った。



【チュンチュン】


朝だ。


俺は目を覚ました。


いつものトレーニングをする為だ。


いつものように起き上がりふと横を見た瞬間俺は驚き固まった。


ドラゴンの女が俺の隣で寝ていたからだ。


しかも同じベッドで。


全然気配を感じ無かった。


もしこれが敵なら俺は殺られていた。


恐怖が少し襲ってくる。


「なんじゃ、もう起きたのか、早起きじゃの」


「何故いる?」


「なに気にするでない」


そんなドラゴンの女を俺はほったらかしてトレーニングに向かう。


「どれ、妾もついて行こうかの」


「くるな」


「なに気にするでない」


そう言うと俺はいつものトレーニングを開始した。


驚いたことにドラゴンの女も俺と同じトレーニングをこなしていた。


「こんなものかの?」


「何がだ?」


「この程度の輩に妾は負けたのかの?」


「!!」


「…」


「そうだな」


「あっさり認めたの」


「ベッドに潜り込んできたお前の気配すら分からなかったからな」


「なに気にするでない、どれ妾が相手をしてやろうかの」


「ありがたい」


「ほっほっほ、どこからでもかかって来たらいいぞ」


「遠慮なく!!」



「…」


「妾の勝ちじゃの」


「そうだな」


「これから毎朝修行じゃの」


「あぁそうだな」


そして世界には俺より強いものがいることを知ったのだった。


「ん?まさかここに住む気じゃないよな?」


「なに気にするでない」


「?!」


そうして新しい住人が増えたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いけいけ勇者様29 最上司叉 @moemee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画

同じコレクションの次の小説