第8話

 その日、屋敷の庭で、セージュは剣を振っていた。

 あたたかな陽ざしが庭にふりそそいでいる。

 ふと、背後から声が聞こえた。


「いやはや、きれいな太刀筋ですねえ」


「誰だ?」

「セージュ殿でよろしいですか?」

「こっちは誰かと聞いているんだが」


「いや失礼。拙者はツバキと申します」


「なんの用事かな?」

「こちらの質問にも答えて欲しいですねえ」

「私がセージュだ。で、用事は?」

「あなたの剣を鍛えようと思いまして」

「不要だ」

「さすがは最年少で騎士と認められたセージュ殿。うぬぼれがひどい。」

「なんだと」


 凍った空気が広がるように二人の周囲だけ気温が急激に下がっていく。


「もう自分より強いものなどいないと思っているのでしょう?」

「お前は強いと?」

「そういうことですねぇ」

「うぬぼれがひどい」

「手厳しいですねぇ」

「不法侵入者は斬られても文句は言えんぞ」

「はぁ……。相手の技量もわかないようでは話になりませんねぇ」

「どうやら、よほど死にたいらしい」

 

 セージュがツバキに剣を向ける。すでにツバキの片手には刀が握られていた。

 

「拙者が死ななかった場合は、私の弟子になってもらいますよ」

「戯れ言を」


 セージュの剣がツバキに襲いかかった。

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