第7話
いざ隣町の大きな病院に車で行くって時。
母さんに留守番しろって言われたけど、俺もばあちゃん心配だ。
もしかしての時に男手あったほうが良いだろうからって母さんを説得して付いていくことにした。
そのやり取りを聞いていたばあちゃんが、なんでか車の中でずっとにこにこしているから、少ーし居心地悪かったけど。
病院ってなんでこんなに緊張するんだろう。
ばあちゃんがCT? の検査に行って数分。
会計受付も閉まって、電気も最小限しか着いていない薄暗い静かな病院のロビーで母さんと待っている。
他のソファーに座っている人もぼんやりとした照明に照らされ暗い表情だし、誰も見ていないテレビに映るのは夕方のニュース番組。
暇だけど、そわそわ落ち着かないからテレビをボーっと眺め時間を潰す。
インコの動画のニュースが流れ始め、明日の天気予報が終わる頃にばあちゃんは戻ってきた。
そこからはまた、時間かかるかもしれないからって母さんが言い出したから、皆で病院の食堂にご飯を食べに行くことに。
病院の薄暗い不気味な暗い廊下を皆で移動。足音も響くし、同じドアの部屋ばかりでお化け屋敷迷路みたい。
ばあちゃんはずっと車椅子に乗っていて、その背中は座っているからか、一回り萎んで見えた。
病院の食堂だからか、机と椅子は低くてガタガタするし、狭い。それにメニューの数が少なくて、渋々俺は唐揚げ定食にした。
意外にも大きな唐揚げが5つもあって、揚げたてだからか美味しそうな唐揚げ定食が運ばれてきた。
もぐっもぐ口を動かして、ばあちゃんのより少し硬い唐揚げを食べる。
「あぁ! 冷蔵庫に唐揚げのお肉入れっぱなし!」
ばあちゃんが思い出したように言う。
「帰ったら、冷凍庫に入れといて」と母さんに言いながらため息を吐いた。
母さんはご飯を口に入れながら面倒くさい顔で頷いた。
俺はちょっとショックで箸が止まっていた。
冷凍庫にお肉を入れるって事は、しばらくばあちゃんご飯も作れないくらい悪いのかもって心細くなってさ。
ばあちゃんを咄嗟に見たら、ばあちゃんはそんな俺の気持ちなんて見透かしたように、にこっと笑った。
「唐揚げのお肉は、冷凍したほうが味が染みて美味しくなるんだよ」
なにか言わないといけないのに、たぶん今話したら良くないこと言いそうで。
「俺、ばあちゃんの唐揚げ好きだよ」
喉まで出てきそうな言葉の代わりに、いつも通りの事しか言えなかった。
「これも美味しいけどね」
その後は無理矢理、ヤケクソみたいに、味があるのか美味しいのかわからなくなった唐揚げ定食を全部食べてやった。
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