第6話
後ろ髪を引かれながら電車を降り、自転車を必死に漕いで家に向かったけど、拍子抜け。
ばあちゃん普通にいつも通りだった。
布団に横になりながら、テレビで推しのアイドルのライブ動画配信見てたんだ。
俺が心配したって言ったら、申し訳なさそうにして、そのライブ配信見るの止めようとしたからさ。
いつもは畑行ったり、買い物行ったり忙しそうに動いているから、暇なのかと思って。
そのままそこで課題しながら、一緒にソレを見ることにした。
「ばあちゃんの推しはこの人?」
「そー。おじいちゃんの若い時にそっくりなのよー」
ばあちゃんはそう言いながら、じいちゃんの仏壇に視線をやり、懐かしそうに目を細めふふ、と笑う。
また、テレビに視線を戻した。
俺はハゲ上がった満面の笑みのじいちゃんの遺影を見ながら、恋って盲目って言うもんなと謎に実感。
でも、好きな人と付き合って結婚まで出来るってすっごい奇跡。
ゲームのガチャでSSS-Rあてるよりスゲーよな。
俺なんて未だに会話さえしたこと無いし、あっちはいつもあの本しか見ていないし。
リア充爆発しろっていつも思ってたけど、アイツラ勇者だ。
告白って無理ゲーだ……。
そんなことを考えたら、ちょっと切なく胸がきゅうっと締め付けられて、油断したら泣きそうだ。
誤魔化すために課題に無理矢理意識を向ける。
数学の数字を見ただけでヤル気半減だけど、公式に当てはめたり、解き方や答えがあるだけありがたいかも。
あの子に俺を見てもらう方法は、誰かが教えてくれるわけでも解き方や答えがないから。
日が暮れて、ばあちゃんの代わりにベランダの洗濯物を取り込んでいたら、駐車場のあたりでドアをバンって乱暴に閉める音。
母さん帰ってきたな。いつもこの音でわかるんだよな。
ベランダから覗いてみると、オレンジ色に染められた駐車場から母さんが影を延ばしながら小走りで玄関に向かっている。
「びょーいん行くから準備してー!! まさー??」
母さんに大声で名前を呼ばれながら、急いで残りの洗濯物を取り込み、洗濯かごを抱え階段を駆け下りた。
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