第31話 お待たせしました
幽霊さんがようけ傍にいても、やっぱり心細かったんやと思う。
両親の姿が見えた瞬間駆け寄ってもうた。
自分にそんな体力が残っていたことに驚きよ。
「よう無事に帰って来た」
「おかえり」
二人とも涙目で抱きとめてくれた。
「心配かけてごめん」
あったかい。
安心する。
「ええんや。それより」
父さんは私の後ろ――美佳に目を向けた。
「美佳、なんか」
「貴女たちが思っている美佳じゃないわ」
「うん。美佳の姿を借りた神様やねん」
「神様」
「うん」
「「……」」
まさか神様を連れて帰ってくるなんて想定外やったんやろうな。
口を開けて無言。
「あ、因みにそこの美女幽霊さんも神様やで」
「それは知っとる」
「知っとったんかい」
教えてくれよ。
私と違って幽霊さんの姿は視えとったのに。
「えっと」
「あっ」
ごめん、分家の優しい丁寧な彼の存在を忘れとった。
「このままここで喋り続けるのは得策ではないかと」
「そうっすね」
同意です。
いつ本家の人間が現れるかわからんもん。
「では行きましょう」
「行くってどこに」
家には帰れん。
隣りが本家やし。
「今ご自宅に帰るのは大変デンジャラスですので、取り敢えず我が家へご案内します。県をまたぎますので、へまをしない限り安心かと」
急に口調がくだけたな。
待っとる間になにがあったんや。
「勝手なことをして申し訳ありません」
おっと、丁寧な彼に戻った。
「いえいえ、大丈夫です。ありがとうございます」
家族全員で頭を下げた。
「ふーん」
「美佳様、御無事でなによりです」
「……」
さっそく人見知り発揮しとる。
私の後ろに隠れて、目線を合わせん。
小さい子みたいな行動で可愛いわ。
「それでは車に」
両親は来たときと同じで、分家の彼の車に。
私と美佳は彼の家の人の車に乗り込んだ。
「ねぇ、凛子」
「なんや」
「ありがとうね」
「え?」
車が発信すると同時に言われた言葉。
驚いて美佳に視線を向けたけど、彼女は窓の外を見とった。
なんに対するお礼かはわからん。
ただ、今の言葉は神様じゃなく、美佳自身の言葉やったように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます