第26話 呑気な神様

 待った。


 私ら普通に談笑しとるやん。


 そんな場合とちゃうやん。


「なぁ、のんびりしとる暇ないんとちゃうん」


「あっ、そうですね」


 おいおいおいおい。


 しっかりしとった美女幽霊さんんはどこへ。


 戻ってきてくれ。


「いつまでも足止めできるわけではありませんから」


「足止め?」


「え?」


 首を傾ける神様。


 可愛い可愛い……ちゃうっ!


「まさか、気づいてないん」


「なにに?」


「おーん」


 嘘やろ神様。


 この山はアンタのフィールドやろ。


「あんな、美佳をお祓いというか、殺そうとしとる人間がようけ山に来てんねん。そいつらを私らの仲間が足止めしとる」


「あらら。物騒ね」


 ちょい、呑気すぎんで。


「アイツらは本気やで。アンタ、山全体をパワーアップしとるやろ。本家の人間どもはただでさえ力が強いのに……多分数で来られたら流石にあの世へ送られてまうで」


「パワーアップさせた意識はないのだけれど」


「無意識かーいっ」


 マジかよ。


 ツッコミが止まんねぇな。


「今まで眠っていたんだもの」


「ほう」


 寝とったんかいな。


 そりゃ……え? じゃあ、


「いつ起きたん」


 疑問。


「地蔵が蹴とばされて、怒った霊に起こされたわ。だから、『憑りついてあげればいいんじゃない?』ってアドバイスしたのよ。そしたらあの上司にくっついて行ったわ」


「え?」


 淡々たんたんと語ってくれるとこ悪いけど、新しい疑問が浮かんでもうた。


「今、蹴とばした部下の方にくっついてんねんけど」


「あら」


 あら、じゃねぇよ。


 そそのかしたんアンタやったんかいな。


 首を傾けたってアカンからな。


 可愛さには騙されへんで。


「そりゃぁ一応は蹴とばしたんだから、報復はしないとね。上司の方は後回しにしたんじゃないかしら」


「ほーん」


 のんびり話をしとる暇はないのはわかっとる。


 わかっとるんやけど、


「そもそもなんで気が狂ったん」


 聞かずにはおられんのよなぁ。


 好奇心旺盛ですんません。


「知らないわよ。寝てたんだもの」


「無責任っ」


 頭を抱えた私を見て、美女幽霊さんは苦笑しとる。


「仕方ないですよ。神様は気まぐれですから」


「そんなもんか」


 って、


「アンタも神様やろがーい」


「ふふふっ」


 楽しそうやな。


 アカン。


 もう質問するんはやめよう。


 神様のこと呑気や、言うてたけど私もおんなじや。


「いい加減本題に入るで」


「話をどんどんそらしていったのは貴女だと思うのだけれど」


「仰る通りです」


 反論の余地なし。


 落ち着いたトーンで言われると若干落ち込むな。


「で、本題ってなにかしら」


 あざっす。


 神様の方から話を振ってくれた。

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