第6章 神様の性格

第23話 第一関門

 息をひそめ、自分なりに気配を消す。


 さっきは跳ね返された結界。


 結果は、


「おっ、いけた!」


 すんなり入れました。


 小声で歓声をあげつつガッツポーズ。


 第一関門クリアだぜ。


 いやーな空気が流れとる。


 そんなもんは気にせーへん。


 木々のざわめきやら虫、鳥の鳴き声が聞こえん静寂に包まれた空間。


 無音。


 こんな体験初めてやわ。


「入れましたね」


 先に入っていた美女幽霊さんが隣りにいた。


「ありがとうございます」


「いえいえ。本当に上手くいくか確信がありませんでしたので、無事に入れてなによりです」


「おん」


 質より量。


 めっさおる幽霊さんに紛れたらいけるってさぁ……やっぱりセキュリティがばがばやん。


 しっかりせーよ、神様。


 私らには好都合なんやけどな。


「さてさて、結界内に入れたわけですが」


「おん」


「神社の境内に入れるかどうかが次の問題ですね」


「あー」


 それは考えとらんかった。


 無計画にもほどがある。


 結界内に入れて喜んでいた気持ちがしぼんでいく。


「取り敢えず進みましょう」


 こっからは美佳の姿が見えん。


「せやな。神社に近づきましょか」


 私たちは陣形を崩さず、そのまま進むこと数十メートル。


 ついに、


「すんなり来れたなぁ」


「来れましたね」


 うん、順調すぎて怖い。


「あっ」


 思わず声をあげてしまった。


「美佳」


 崩れた本殿に座って本を読んどる。


 どっから持ってきたねん、その本。


 あと、そんな汚いとこに座ったら服が汚れ……もう人間やないから

そこんとこ気にせんでええのか。


「こちらには気づいていないようですね」


「ホンマにもう……」


 ため息ついてまうわ。


 結界張って安心しきっとる。


 アホか。


 アンタが山の力を増幅させたんやから、なにがあってもおかしくないって警戒心を抱いときぃや。


 もしかして。


 もしかしなくても。


「なぁ、美女幽霊さん」


「はい」


「この山の神様ってポンコツなん?」


「うーん」


 顎に手を当てて首を傾けとる。


 それ、あざといポーズやで。


 美女がやると絵になるなあ。


「おそらくですが、人間に憑りつくのが初めてなんでしょう」


「え、そんな神様おるん」


 びっくりや。


「神様ですからね。普通は姿を現しませんし」


「せやけど、今回は地蔵蹴とばされて、話し合いに来た美佳に憑りついたで?」


「気まぐれなんだと思いますよ。神様ですし」


「あーね」


 忘れとったわ。


 こっちの常識が通じひんのが当たり前なんよな。


 美女幽霊さんと話が普通にできたせいで、うっかりうっかりうっかり八兵衛。

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