第22話 いざ出陣

 幽霊さんとの作戦会議が終わり、私はみんなに囲まれた。


「ホンマに凄い数やな」


 見渡す限り幽霊さん幽霊さん幽霊さん。


 最後尾はどこやねん。


「この倍以上の数が本家のヤツらを足止めしとるんです」


 そう言ったのは、お隣の、左腕がない幽霊さん。


 顔はイケメン。


 芸能界にいそうや。


「ほーん。よう集まってくれたね」


「みんなお二人に恩義を感じとりますんで」


 笑っとる。


 目の保養やね。


 私は美佳しか興味ないからあんまし意味ないけども。


「てか、誰が幽霊さんらをまとめてるん。数百体以上おるんやろ?」


 指示役がおらな。


 基本幽霊さんは自由奔放やもん。


「あぁ、それでしたらあの方が」


 指さしたんは先頭に立っとる美女幽霊さん。


「成程」


 確かに彼女やったら何百体でもまとめられそうや。


 頭がキレるし、話がわかりやすいし。


 怒ったら怖そうやし。


 知らんけど。


「凛子さん」


「あっ、はい」


 よく声が通りますね。


 耳元で聞こえる感じやわ。


 何度でも言うけど、やっぱり会話できるってええね。


 今まで視えんかったんが視えるようになって。


 これからどうなるかわからん。


 また視えへんように、聞こえへんようになるかもしれん。


 それは嫌やなあ。


 ずっと存在を感じときたい。


 仲間やもん。


 美佳の次に大切なんやもん。


「それでは参りましょう」


「はっ、はい」


 私の想いを伝えておくべきやろうか。


 この先なにが起こるかわからへんし。


 「凛子さん?」


 私の迷いを感じとったんやろうな。


 美女幽霊さんが首を傾げとるのが遠目に視えた。


「えっと……」


「大丈夫ですよ」


「え?」


 今度はこっちが首を傾げる番。


「私たちはこの先もずっと一緒です」


 あはっ。


「なんでわかったん」


 美女幽霊さんには全部お見通しやった。


 いや、彼女だけやない。


 他のみんなもや。


 私をじっと見つめとる。


「何年一緒にいると思ってるんですか。凛子さん、意外と感情が顔に出るんですよ」


 本日何度目かの苦笑。


「そっか。そうなんか」


 私って顔に出やすいんやなあ……待って。


「ということは、美佳に私の気持ち伝わってもてるんちゃうん」


 いざ出陣! ってなときになんの心配しとるねんって話と思うやろ。


 しゃーないやん。


 私にとっては重要なことやねん。


「あっ、それは大丈夫だと思いますよ。美佳さん、人間の感情には鈍いですから。幽霊の心の機微には聡いのに」


「おーん」


 嬉しいような悲しいような。


 私の想いが伝わるには前途多難やな。


 その前に、


「ごめん、行こか」


 美佳を連れて帰らな。


「はい、行きましょう。ここにいない幽霊達は妖怪大戦争ならぬ、幽霊大戦争を繰り広げておりますので。今のうちに」


 美女幽霊さんの声に応えるように、周囲の幽霊さんが声をあげる。


 唸り声みたいな感じや。


 大半がまともに喋られへん幽霊さんなんやな。


 それでも士気の高さが伝わってくる。


 ホンマ感謝やわ。


「それでは!」


 美女幽霊さんが一歩踏み出し、結界に触れ無事通過。


 その後も続々と通過。


「きたきたきたきた」


 私の番。


 どうか、作戦通り、みんなと同じように通過中に入れますように。

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