第17話 ご当主様は知らない 2

「妊娠したことを知り、母を捨てたようです」


「クソだな、おい」


 おっと、父さん口が悪い。


 自分のこと棚に上げて言うわ。


「はい、クソです。奥様が精神を病んでしまわれたのも、アイツのせいです」


 アンタも口悪いんかーい。


 いや、当たり前か。


 自分の母親が捨てられたんやもんな。


 それでも奥様のことを気づかうなんて。


 性格がよすぎる。


 確かに奥様があぁなってもたんはクソご当主様のせいや。


 奥様は分家の人間じゃのうて、お見合い結婚。


 最初は馴染もうと頑張っとったらしいんやけど、ご当主様の性格がクレイジーなのと生活に慣れんのが重なり精神を病んでもた、らしい。


 表に出てくることは滅多にないからよう知らん。


「このことを知っているのは一部の分家だけ。今回は彼らが協力してくれています。山につけば、こっそり入山させてくれる手はずになっています」


「ありがたい」


 ホンマにな、父さん。


 激しく同意。


「分家の一部は本家の無理やりなやり方に反発しています。少しずつ本家に従順な家を説得しています。そのうち本家は痛い目をみることになるでしょうね」


 めっちゃ笑顔ぉぉぉぉぉぉぉぉ。


 わかった。


 この人怒らせたらアカンタイプの人やわ。


 今回のことが無事に決着したら、ちゃんとお礼しよ。

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