第13話 思い出が壊される 2
「父さん……」
「指示があるまで動いたらアカン」
辛そうな表情やった。
ガッシャンガッシャン。
美佳が使っとった食器が割れる音がする。
投げられた割れるよな。
あんな適当に扱わんでもええやん。
私ら家族にとって大切な物なんやで。
「なぁ、これって」
前を向いたまま、
「燃やすってことよな」
わかりきったことを聞いてしまった。
沈黙が耐え切れんかったんよ。
「そうね」
いっつもハイテンションな母さんが静かなトーンで答えた。
そういやご当主様が言っとったな、「ヤツの物を燃やし、儀式を行い山へ向かう」って。
儀式ってなんや。
疑問が頭に浮かんだところで、全ての荷物が投げ終えられた。
「それでは」
「うむ」
若様を筆頭に、周囲の人間が火をつけ始める。
「あぁ……」
嘆いても悲しんでも、止められへん。
ただ火の勢いを増していくのを見ていることしかできひん自分が情けない。
「凛子」
父さんが私の前に立った。
思い出の物が燃やされるのを見せんようにしてくれたんやな。
「ありがとう」
美佳のものを燃やして一体なんになるんやろう。
こんなことしとる暇があったら、早う山に行った方がええんとちゃうんか。
そのとき、突っ立っている私たちにお手伝いさんが話しかけてきた。
「みなさんが荷物をまとめている間に、見張りを立て、山を立ち入り禁止にしました。入口にはしめ縄を括ってあります」
初めて見る人。
最近来たんやろうなあ。
昔からおる人は私らに当たりが強いもん。
というか、手をまわすん早ない?
流石というかなんというか。
ご当主様が
「これから我々は山へ向かいます。その間、みなさんは屋敷で待機してください。ついて行くことはできません」
「そんなっ。私らも」
この人に言うたって意味がないのはわかっとる。
でも、抗議せな。
私に責任の一端があるんやから。
「申し訳ありません。ご当主様の指示です」
彼は頭を下げて火の方へ向かっていった。
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