第13話 思い出が壊される 1/2

 大量の荷物は私らの手では持ちきれんかった。


 10歳から暮らしてんねやもん。


 父さんが通販で一目惚れし、使うことなく物置にしまい込んでいた台車を引っ張りだすことになった。


「遅い!」


 屋敷の敷地に踏み入れた瞬間に罵声。


 あん? ご当主様とちゃうやんけ。


 お前誰や。


「申し訳ありません」


 白い袴姿。


 見たことないってことはお手伝いさんやな。


 モブがしゃしゃんなよ。


「ご当主様がお待ちだ。ついて来い」


 いやいやいやいや、これでも超特急でまとめた方やぞ。


 わかってんのか?


 約10年分の荷物やぞ。


 文句言うてもしゃーないから黙っとく。


 さっき来たときには明かり一つ点いていなかった屋敷中の電気が点いている。


 全員起きとるな。


 なんだかんだ言うて美佳のことが大切なんやろか。


 薄情な人間どもやと思っとったんやけどなあ。


 訂正しとこか。


「遅いっ」


 屋敷の裏に回ると、ご当主様が上下白の袴姿でおった。


 お手伝いさんと違って質のいい感じのん。


 ぱっと見やからようわからん。


 本日二度目の「遅い」


 せやから……ツッコミは今は置いといて。


「なんやこれ」


 異様な光景が広がっとった。


 さっきのお手伝いさんと同じ白い袴姿の人たちが、庭の中心に置かれた大量の木の枝が積み重ねられた周囲を囲んどる。


 その中には美佳の弟の長男『若様』と次男の『若君』がおって、私らを睨みつけとった。


 ひっさしぶりに見たなぁ。


 若様は18歳で、若君は15歳やっけ。


 二人ともデカなっとる。


 ご当主様より身長高いやんけ。


 顔はようご当主様に似とるわ。


 もやしみたいにひょろいから頼りがいなさそうなんが残念。


 隠居しとる祖母の『大奥様』と祖父の『御隠居様』はおらんし、カラダが弱ぁて基本寝たきり生活らしい美佳のお母さん『奥様』は不在。


「えっ、ちょっ」


 ボケっとしとったらお手伝いさんたちが、私らが持ってきた荷物を枝の上に放り投げ始めた。


「なにしとんねん」


「口を出すな」


 なんでこんなお手伝いさんの当たり強いねん。


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