第4幕 衝撃

第15話 味方? 1/2

 だだっぴろい屋敷の、用途不明なせっまい部屋に私らは押し込められた。


 3人で満員。


 男3人やったら入りきらんのとちゃうか。


 ヤバすぎやろ。


 扉の外にはさっきの優しいお手伝いさんが立っとる。


 彼一人やから逃げれんこともないけど。


 逃げたところで……。


 ホンマに情けない。


 山でもここでも無力。


 大切な人を守れんかった。


 悔しい。


 悲しい。


 彼女が殺されるのを待つしかないなんて。


 きっと葬式なんてやってもらわれへんのやろうな。


 やったとしても参加させてもらわれへんのやろうな。


「この部屋」


 膝を抱えて俯いとったら、母さんが口を開いた。


「なに」


「美佳ちゃんの部屋よね」


「そういえば、そんなことを言っとったな」


 父さんの言葉で記憶がよみがえった。


 言ってたわ。


 屋敷の中で一番狭い部屋に閉じ込められとった、って。


 学校もまともに来とらんかったなぁ。


 隣りの家やし分家やし、私がプリントを届ける係になるのは必然やった。


 呼び鈴ならして、


「こんにちは。美佳ちゃんのプリントを――」


 お手伝いさんが出てきて、言い終わらんうちに奪い取るように受け取って勢いよく玄関閉められたわ。


 ようドア壊れへんなぁ、って思っとった。


「こんな部屋に閉じ込めとったなんて、ホンマに美佳のことが嫌いやったんやな」


 幽霊さんと仲良くするのがそんなに気に入らんかったんか。


「前のご当主様は優しかったんだがなあ……代替わりしてからは」


 それ以上は言わんかったけど、父さんが言いたいことはわかる。


 前のご当主様――御隠居様は分家の人間にもお手伝いさんにも優しくて、孫想いの素敵な人やった。


 小さいころは遊んでもろた記憶がある。


 そこで初めて美佳と会ったんよ。


 小さいころからインドア派やったけど、私が遊びに来たら一緒に遊んでくれた。


 長い付き合いやな。


 思い返すと。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る