第11話 頭髪上指 2

「ご当主様に至急お話ししなければいけない話があり、失礼を承知の上で参りました」


 私らは頭を下げたまま。


「なんだ」


 チラッと前を見たら、玄関を背に腕を組んで仁王立ち。


 おいおいおいおい。


 いつだって一緒に行動しとる美佳がおらんことに対して、なーんも疑問を抱かんのかいな。


 アホかこいつ。


「実は――」


 父さんが全てを説明した。


 文脈が滅茶苦茶だった私の話をようちゃんとまとめてくれたと思う。


 あ、待たされてた間に頭の中で整理したんか。


 ごめんな。


 上手く説明できひんで。


 そんな余裕なかったんよ。


「なんだとっ」


 急に大声を出され、思わず顔を上げた。


「げ」


「凛子」


 小声で母さんに注意されたけど、しゃーないやん。


 誰だってびっくりするやろ。


 髪の毛が逆立っとったら。


 鬼の形相やし。


 そういや『頭髪上指とうはつじょうし』って四字熟語があったな。


 流石霊能力者。


 モノホンは違うわぁ。


 って、呑気なこと考えとる場合やない!


「お前らがついていながら……なにをしていたんだ!」


「申し訳ありません」


 謝るしかない。


 でも、


「母と父は関係ありません。私の責任です」


 そこはハッキリ言っておきたい。


 ほいほいバイトを引き受けとって、美佳に頼りきりやった私が悪いんやから。


「ふんっ……状況はわかった。すぐにアイツの荷物を全て持って来い」


「はい?」


 どういう意味や。


「お前たちを放置していた私たちが悪かった。アイツが見つかるまでの間、本家で過ごしてもらう」


「いや、あの荷物持って来いってどういう意味ですか」


 既に私たちに背を向けていたご当主様は、


「ヤツの物を燃やし、儀式を行い山へ向かう。すぐに持って来い。ヤツが使っていた食器や筆記用具等もだ」


 そう言って屋敷の中に入っていった。


 なぁ、おい。


 説明したようで説明になってなかったぞ。


 クソ当主が。

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